根管治療(いわゆる「歯の神経を取る治療」)は、虫歯が進行して歯の神経(歯髄)が感染してしまった場合に行われる治療法です。特に感染根管治療とは、一度根管治療を行った歯が再感染した場合に再度治療を行うことを指します。この治療の成功率はさまざまな要因によって異なりますが、一般的に50%~と報告されています。が、当院では「直せる確率は半分以下」と考えております。

今回は、感染根管治療の成功率について詳しく解説し、成功率を高めるためのポイントについても紹介します。


1. 感染根管治療の成功率とは?

感染根管治療の成功率は、治療後に症状がなく、X線検査などで病変の縮小や消失が確認できるかどうかによって評価されます。いくつかの研究によると、初回の根管治療の成功率は90%前後と比較的高いですが、再治療(感染根管治療)の成功率は60〜80%程度とやや低下します。しかし研究の数値は「良すぎる」という感じがします。

1-1. 初回の根管治療と再治療の違い

初回の根管治療では、歯髄を完全に除去し、根管内を無菌状態に近づけた後に封鎖することで治癒を目指します。一方、感染根管治療では、すでに一度治療したにもかかわらず、細菌が根管内に残存または再侵入してしまった状態からのスタートとなるため、治療の難易度が上がります。

1-2. 成功率に影響を与える要因

感染根管治療の成功率は以下の要因によって左右されます。

  • 感染の程度: 細菌感染が根の先端や周囲の骨に広がっている場合、治療の成功率は低下します。
  • 根管の形態: 歯の根の形が複雑であったり、細い根管がある場合は、完全に消毒するのが難しくなります。
  • 以前の治療の質: 初回の根管治療が不十分だった場合、細菌が再び増殖しやすくなります。
  • 封鎖の適切性: 治療後に適切な詰め物やクラウンが装着されないと、細菌が再び侵入しやすくなります。
  • 患者の免疫力: 糖尿病や免疫不全などの持病がある場合、感染の治癒が遅れることがあります。

2. 成功率を向上させるためのポイント

感染根管治療の成功率を向上させるためには、以下の点に注意することが重要です。

2-1. 精密な診断と治療計画

事前にX線やCTスキャンを活用し、感染の範囲や根管の形状を詳細に把握することで、より精度の高い治療が可能となります。

2-2. ラバーダムや隔壁の使用

ラバーダム(治療中に歯を覆うゴム製のシート)を使用することで、唾液中の細菌が根管内に入り込むのを防ぎ、治療の成功率を高めることができます。隔壁も同様の用途で行います。

2-3. 高品質な器具と消毒

最新のニッケルチタン製ファイルや、レーザー消毒、超音波洗浄を活用することで、根管内の細菌をより徹底的に除去できます。

2-4. 適切な根管充填と補綴処置

根管治療が成功しても、詰め物やクラウンが適切でないと、細菌が再侵入するリスクが高まります。治療後の適切な補綴処置(かぶせ物など)が重要です。

2-5. 定期的にきちんと通うこと

根管治療は回数も期間もかかります。治療計画に基づいてきちんと通わないと、治療中に再感染を起こすこともあります。


3. 根管治療が失敗した場合の選択肢

もし感染根管治療がうまくいかない場合、以下のような選択肢があります。

  • 再根管治療の試み: さらに精密な治療を行い、感染を除去する
  • 外科的歯内療法(歯根端切除術): 根の先端を外科的に切除し、感染源を取り除く
  • 抜歯とインプラント: どうしても治療が成功しない場合、抜歯してインプラントやブリッジを選択する

まとめ

感染根管治療の成功率は60%〜90%と幅がありますが、治療の質や患者のケアによって向上させることが可能です。成功率を高めるためには、正確な診断、高品質な器具の使用、適切な治療技術、そして治療後のメンテナンスが不可欠です。治療が必要な場合は、信頼できる歯科医師のもとで適切なケアを受けることが大切です。