可能な限りう蝕処置で抜髄は避けるようにしていますが、中には不可避な場合もあります。 治療において抜髄など神経を取ることのデメリットなどを読者に確認していただくこと。 そして、神経を取らざるを得ない場合などを確認していただくようにしています。 治療における理解を深めていただく狙いがあります。
〇神経を取った後のデメリット
歯科医院では日常的に歯の神経を取る処置が行なわれています。 もちろん、神経を取らなくても良い場合に無理して取ることはありませんが、やむを得ず神経を取る処置を行う事は多いです。 神経を取る処置を抜髄(ばつずい)と呼びます。この抜髄にはどのようなデメリットがあるでしょうか。 デメリットには大きく2つあります。神経を取る時点に起こる事と将来的に起こる事の2つに大別されます。
①歯の神経を取ると歯の量が減る
②将来的に根尖病巣が起こる可能性がある
この2点が大きなデメリットになります。
それぞれを確認しましょう。
●神経を取った後のデメリット ①歯の量が減る
抜髄処置で歯は大きく削ることになります。 まず虫歯によって汚染されている場所を取り除きます。 そして、歯の神経の部屋を鏡などで歯の上から目視できる様にして、神経を取り除く器具が入る様に歯の形を削って整えていきます。 必然的に歯の量が減るので、歯がもろくなることが想定されます。 従って将来的に歯が割れてしまうリスクが高くなります。
●神経を取った後のデメリット ②根尖病巣が起こる可能性がある
抜髄処置後は一生そのままかと言われるとそうではありません。 時として詰め物や被せ物の隙間などから細菌が侵入して、根尖病巣(歯の根の先の炎症)を作ります。根尖病巣はできたとしても無症状のことが多いです。 しかし、風邪などを引いて体調が悪くなったり、根尖病巣が大きくなるなど悪化したりすると痛みを伴うことがあります。 神経を取った歯のはずなのに痛みを感じる場合にはこの状態になっている事があります。 根尖病巣は基本的に歯の神経がない又は死んでしまっている状態の場所に起こります。 神経がしっかり残っている歯にはまず起こりません。
〇神経を取らなくてはいけない場合
神経は上記理由からなるべく取らない様にした方が良いのですが、やむを得ず取り除く場合があります。どの様な場合かを確認しましょう。大きく3パターンが考えられます。
①知覚過敏が酷い時
②虫歯が大きい場合
③何もしなくても痛い場合
上記の場合には神経を取る処置が必要になることが多いです。 それぞれ確認しましょう。
●神経を取らなくてはいけない場合 ①知覚過敏が酷い場合
知覚過敏は一般的に冷たいものや柑橘系のものが一時的にしみる。 歯磨きの時に歯ブラシが当たるとしみるなど一時的な症状であることが一般的です。 症状もその時の一瞬で、痛みが何十秒も続くことはありません。 仮にその症状が強い場合や続く場合には中の神経に炎症を起こしつつある可能性があります。 虫歯でなくても歯の中の神経に炎症が起こると痛みやしみが酷くなることがあります。 生活に支障が出るようなしみる症状の場合には止むを得ず神経を取り除くことがあります。
●神経を取らなくてはいけない場合 ②虫歯が大きい場合
虫歯が大きい場合にも神経を取り除くことがあります。 一般的に虫歯は大きくなるにつれて痛みが大きくなります。 しかし、虫歯は時に痛みなどの症状があまり無いにも関わらず内部で大きく広がることがあります。 可能な限り神経を取らないように処置をしていても、あまりに虫歯が神経に近い場合や虫歯を取り除く段階で歯の神経に達してしまう場合には神経を取ることがあります。 痛みがなくても虫歯が大きい時には神経を取り除くことがあることを知っておきましょう。
●神経を取らなくてはいけない場合 ③何もしなくても痛い場合
歯の神経がある歯において、何もしなくても痛い時には歯の中の神経に炎症を起こしていることが一般的です。 何もしていなくても痛いことを自発痛と言います。 歯の神経の炎症は症状が落ち着く場合と痛みが続く場合があります。 自発痛がある場合には炎症が落ち着く可能性は極めて低く、神経を取り除く処置が行われることが多いです。 中には過去に神経を取り除いたにもかかわらず、自発痛を生じることがあります。 根尖病巣や歯周病、歯の破折などその他の理由からも生じることがあります。 痛みの原因は多岐にわたるので神経を取り除くべきなのか状態をさらに精査する必要性があります。
これらからわかる様に歯の状態や痛みなどの症状によっては神経を取り除くことがあります。 しかし、歯を削ることや歯の神経を取ることは不可逆的な治療です。 つまり、元に戻せない処置です。痛みの原因をしっかりと精査した上で治療を進めるようにしましょう。
〇まとめ
歯の神経はなるべく取らない方が歯にとっては良いです。 神経を取る場合は歯の状態や痛みなどの症状が強い場合にやむを得ず行うことがあります。 仮にしみる症状が辛いのであれば、しみる程度にもよりますが、知覚過敏を抑制・緩和させる処置があります。 何度か試してみて、症状がどの程度変わるのか確認するのも一つの方法です。 慢性的にしみる症状が続いている場合には歯の神経に炎症を惹起させる可能性があります。 心配な場合には早めに歯科受診するようにしましょう。