個人情報が含まれておりますので時期や年齢はずらしています

〇きっかけ

2018年4月に来院されました。左上の前歯のところの歯茎が腫れて痛むとのことでした。

患者さんのパノラマ写真です。

〇所見

左上の2番の歯は根管治療がなされており、その根尖相当部位の歯肉が腫れて膨らんでおりました。

患部の歯の部分を拡大した写真です。根尖病巣が小さく映っていますが、歯冠部の歯質に虫歯のような影も見られます。
根尖病巣によって歯茎が腫れている様子をイラストで説明。

↑イラストは下顎の奥歯ですがこのような状態でした。

〇抜歯への決断。

今回の腫れは、根管治療が結果的にうまく行かなくて根っこに細菌が取り付いたためでした。

根管治療の再治療で治せることもありますが、完治する確率は高くありません。

前歯の根尖病巣とはどのようなものかをイラストで解説。

もう一つの問題点として、根管治療をした歯は金属冠などで被せて補強するのが基本形ですが、

それがなされていません。

そのせいか、歯冠部で歯が破折をおこし、そこから虫歯も入っている様子がうかがえました。

つまり「根管治療で脆くなったところに噛む力が加わってついに歯冠が折れた」ということです。

〇抜歯~即時義歯

2018年5月に抜歯。同日即時義歯セット。

一本分の義歯とはどのようなものかを解説する写真

↑写真は奥歯の一本義歯です。前歯でもこのような形です。

あらかじめ抜歯前に型を取っておいて、模型上で抜く歯の部分を削り取ってしまいます。

その模型上で義歯を作っておけば、抜歯後すぐに入れ歯を入れることもできるわけです。

もちろん抜いたばかりの歯茎にピッタリではありませんし、金具も見えてしまいます。

しかし、抜きっぱなしで「何もない空間」よりはマシということで、この段取りとなりました。

〇インプラントオペ

抜歯から2か月後、歯肉や骨の治り、炎症がないことをレントゲン写真やCTなどで確認。

20218年7月にインプラントオペを実施しました。

オーギュメーターを使ったオペ中の写真。まずは細いオーギュメーターを使用しています

今回は「オーギュメーター」という千枚通しのような器具を使いインプラント窩(穴)を空けています。

千枚通しとはどのようなものかをイラストで解説

〇オーギュメーター

岐阜の先生が開発した「ドリルを使わないインプラント手術」を行う道具です。

じつは骨はあまり硬くありません。表面は固いものの中味は「バルサ材」くらいの硬さなのです。

そこで細い千枚通し~徐々に太い千枚通し、でじわじわと広げることができるわけです。

オーギュメーターの中くらいの太さの物でインプラント窩を掘っているところ

0.5ミリほどの一番細いものを「方向」「深さ」を確認しながら押し込んでゆきます。         その次は0.8ミリ、次は1.2ミリ、1.6ミリ、という風に徐々に太いものをゆっくり押し込んでゆきます。 深さと方向はその都度確認をします。

オーギュメーターの太いものでインプラント窩を掘っているところ。

メリットとしては、骨細胞を削り取ってしまわないこと、骨細胞を圧迫しているので周囲の骨密度が上がること、などがあげられますが、骨細胞は生き物ですから圧迫されたその後の実際の穴の周りの細胞がどう変化するかは研究がなされてはおりません。

しかし、現実に使用して何ら問題がありませんので、「長持ちが期待できる長所」として使用しています。

患者さんにとっても「ゴリゴリ削られる感触がない」と割と好評です。

デメリットとしては、治療時間がドリルと比べて少し長くなることくらいです。

インプラント窩にAQBインプラントの4ミリ径の物を埋入したところの写真です。ワンピースインプラントを使っています。

インプラントを埋入した時のレントゲン写真です。

口腔内に露出している部分には当日中に「仮歯」を入れて審美性を確保しています。

ワンピースインプラントは口腔内に出た部分がありますので、すぐ仮歯を入れることができます。

もちろんそこで噛むことは避けたいのですが、その場で審美性を回復できるメリットは大きいです。

この時点で「入れ歯」は卒業です。

〇約2か月後

レントゲンなどで特に問題がないことを確認後、印象してジルコニアクラウンを装着して治療を終了しました。

上部構造であるジルコニアクラウンを装着したところの実際の口腔内写真。
反省点としては、歯の色がインプラントが若干透けてしまってグレーに見えるところです。      当時のジルコニアクラウンでは技術的に透けないようにすることが難しかったのです。        今ではもっと目立たなくできます。             

8年後の現在特に問題なく機能しております。