知らないと損する銀歯・金歯の行方を歯科医が解説
もし今、あなたの口の中に銀歯が3本入っているとしたら……
その金属には、いったいいくらくらいの価値があると思いますか?
「数百円くらい?」
「いや、金属だから数千円?」
実は、価値があるものもあれば、思ったほど価値が付かないものもあります。
さらに驚くことに、価値があるにもかかわらず、患者さんに返却されずに処理されることもあるのです。

すると、
「自分の金属なのに、なぜ返してもらえないの?」
「感染性廃棄物って聞いたけど、どういうこと?」
「金歯は売れるって聞くのに、銀歯は売れないの?」
そんな疑問が次々に出てきます。
実は、歯科で外した金属には、
「医療廃棄物」と「貴重な資源」
という、一見すると矛盾した二つの顔があります。
今回は、その少し複雑な仕組みを、歯科医の立場からできるだけ分かりやすくご説明します。
Q. 外した銀歯は誰のもの?
患者さんから最も多い質問の一つがこれです。
「先生、この銀歯は持って帰れますか?」
結論から言えば、
医院によって対応が異なります。
返却してくれる歯科医院もありますし、
「返却していません」
という歯科医院もあります。

「法律で返してはいけない」と決められているわけではありません。
各医療機関が、それぞれの運用方針を決めているのです。
Q. なぜ返却してくれない歯科医院があるの?
特に大学病院や総合病院では、
「外した金属は返却しません。」
という方針を採っていることがあります。
理由としては、
- 感染管理を統一したい
- 保管・返却の手間を減らしたい
- 他人の金属との取り違えを防ぎたい
- 医療安全を優先したい
などがあります。
ここでよくある誤解があります。
それは、
「感染性廃棄物だから法律上返せない」
というものです。

しかし実際には、
法律で返却が禁止されているわけではありません。
より正確には、
「感染性廃棄物として処理するという院内ルールを採用しているため返却しない」
ということなのです。
つまり、手術や処置で出た「血の付いた布や針」「汚物」などと一緒に処理するイメージです。
Q. 「感染性廃棄物」とは何でしょう?
銀歯そのものはただの金属です。
しかし、口の中から外した直後には、
- 唾液
- 血液
- 歯垢(プラーク)
- 歯質
などが付着しています。
そのため、感染のおそれがある医療廃棄物として管理される場合があります。
つまり、

危険なのは金属ではなく、口の中から出てきた医療材料だからなのです。
Q. 感染性廃棄物はどう処理されるの?
感染性廃棄物は一般ゴミとは違います。
例えば、
- 注射針
- メス
- 血液の付着したガーゼ
などと同じように、法律に基づいて厳しく管理されています。
歯科医院では専用容器で保管し、許可を受けた専門業者へ引き渡します。
さらに、
マニフェスト制度
という仕組みによって、
「いつ・何を・どれだけ・誰に引き渡したか」
を記録し、最終処分まで適切に行われたことを確認します。

つまり、
歯科医院は
「捨てたら終わり」
ではないのです。
Q. それなら銀歯は全部焼却されるのでしょうか?
答えは、
「いいえ」です。
歯科用金属には、
- 金
- 白金(プラチナ)
- パラジウム
- 銀
などの貴金属が含まれていることがあります。
そのため、
感染対策を行ったうえで、
専門業者が回収し、
精錬して再利用されるケースも数多くあります。
つまり、
感染性廃棄物=焼却処分

ではありません。
医療廃棄物であると同時に、
都市鉱山と呼ばれる貴重な資源
でもあるのです。
Q. 外した金属には本当に価値があるの?
答えは、
あります。
しかし、
ここからが意外なお話です。
価値を調べるにも、
実はお金がかかるのです。

Q. なぜ銀歯1個では売れないことが多いの?
銀色の歯科用金属は、
見た目だけでは
- 金銀パラジウム合金
- 銀合金
- その他の合金
なのか判断できません。
正確な価値を知るためには、
最終的には精錬・分析が必要になります。
この精錬・分析には、
一般に1回あたり数千円から1万円程度以上の固定費がかかることがあります。
つまり、
小さな銀歯を1個だけ分析すると、
金属の価値より分析費用の方が高くなる
ことがあるのです。
だから多くの歯科医院では、
金属をある程度ためてから専門業者へ渡しています。
まとめて精錬した方が、

はるかに効率が良いからです。
Q. 金歯はどうして売れるの?
金歯は事情が少し違います。
金合金は比較的価値が高く、
見た目や重さからある程度査定できます。
実際、
ある大手買取店では
状態や重量、金相場によっては、
金歯1本でも数千円から数万円程度で買い取られることがあります。
一方、
銀歯は
「価値がない」
のではありません。
1個だけでは採算が合わない
ため、

取り扱い対象外としている店舗もあります。(買〇大吉2026年7月取材)
Q. 買取店は毎回分析しているの?
実はそうではありません。
査定担当者は、
- 色
- 重さ
- 大きさ
- 過去の経験
から、
「このくらいの価値がありそうだ」
という査定を行っています。
そのため、
抜歯した歯が付いたままの金歯でも査定できることがあります。

そして、回収した金属を大量に集めたあとで精錬・分析が行われるのです。
患者さんが知っておきたいこと
もし外した金属を持ち帰りたい場合は、
治療前に確認しておくこと
をおすすめします。
医院によって方針は異なります。
また、
返却された金属を売却したい場合も、
買取店ごとに査定基準や取扱いが異なりますので、
事前に問い合わせると安心です。

まとめ
歯科医院で外した銀歯や金歯は、「感染性廃棄物」として適切な管理が必要になる一方で、金やパラジウムなどを含む「資源」という側面も持っています。
そのため、感染対策を行ったうえで専門業者へ引き渡され、再資源化されることも少なくありません。
また、返却するかどうかは法律で一律に決められているわけではなく、各医療機関の運用方針によります。
そして最後に、ぜひ覚えていただきたいことがあります。
「価値があること」と「1個でも高く売れること」は別の話です。
銀歯には価値がある場合でも、分析コストの方が高くなるため、1個だけでは買い取りが難しいことがあります。一方、金歯は比較的査定しやすいため、1本でも値段が付くことがあります。

歯科で外した金属には、「医療」と「リサイクル」という二つの側面があります。この仕組みを知っていただくことで、「なぜ返却される医院と返却されない医院があるのか」「なぜ金歯と銀歯で扱いが違うのか」が、より身近に感じられるのではないでしょうか。























