歯を失ったときの治療選択肢として、「インプラント」と「入れ歯(義歯)」が広く知られています。しかし最近、両者の“いいとこ取り”とも言える「インプラントオーバーデンチャー」が注目を集めています。
「インプラントは高額で大変そう」「総入れ歯は外れやすくて困る」そんな悩みを持つ方にとって、インプラントオーバーデンチャーは“体にもお財布にも優しい”選択肢になるかもしれません。
この記事では、インプラントオーバーデンチャーの仕組みから、メリット・デメリットまで、丁寧に解説します。
■ インプラントオーバーデンチャーとは?
インプラントオーバーデンチャーとは、少数のインプラント(通常2〜4本)を顎の骨に埋め込み、それを固定源として総入れ歯を安定させる治療方法です。
従来の総入れ歯は、粘膜(歯ぐき)だけで支えるため、外れやすい、噛みにくい、話しにくいといった悩みがありました。一方、インプラントオーバーデンチャーでは、インプラントによって入れ歯が固定されるため、安定性が格段に向上します。
■ 通常のインプラント治療との違い
通常のインプラント治療では、1本の歯を1本のインプラントで支えることが一般的です。例えば歯が6本なければ、6本のインプラントを埋め込むことになります。治療費も体への負担もそれなりに大きくなります。
一方、オーバーデンチャーは少ない本数のインプラントで広い範囲をカバーするので、費用も身体的な負担も抑えられるのが特徴です。
■ メリット1:コストを抑えられる
通常のインプラントは、1本あたり30〜50万円が相場です。例えば上下で12本必要とすると、数百万円に達するケースもあります。
それに対し、オーバーデンチャーでは上下で4〜6本のインプラントで済むため、トータルの費用は100〜200万円程度に収まることが多いです。しかも保険適用外とはいえ、通常のインプラント治療より大幅に抑えられる点は大きな魅力です。

■ メリット2:入れ歯の安定性が高い
インプラントで入れ歯を支えるため、食事中や会話中に外れる心配がほとんどなくなります。
また、噛む力がアップすることで、硬いもの(たくあん・せんべい・肉類など)も食べやすくなり、食事の楽しみが取り戻せることもよくあります。

■ メリット3:取り外しできる清掃性
オーバーデンチャーは自分で簡単に着脱が可能な構造になっています。就寝前や食後に外して洗うことができるため、インプラントの周囲に汚れが溜まりにくく、清潔に保ちやすいのも特徴です。
■ メリット4:手術の負担が少ない
本数が少ないため、手術の範囲が小さく、身体へのダメージも軽くなります。高齢者や糖尿病など全身状態に不安がある方でも、条件を満たせば適応可能なことがあります。

■ デメリット1:自由診療のため保険が効かない
インプラントオーバーデンチャーは、基本的に保険適用外(自由診療)です。費用の目安としては、下顎の2本インプラント+オーバーデンチャーで70〜120万円前後、上顎だと骨の状態によってもう少し高くなる場合もあります。
経済的な負担は軽減されているとはいえ、保険診療の総入れ歯と比べれば高額です。

■ デメリット2:インプラント手術が必要
少ないとはいえ、顎の骨にインプラントを埋め込む手術が必要です。体調や持病によっては、インプラント治療自体が適応とならない場合もあります。また、術後の腫れや痛み、稀に感染のリスクも考慮する必要があります。

■ デメリット3:定期的なメンテナンスが必須
インプラントも入れ歯も、メンテナンスを怠ると不具合が起こりやすくなります。インプラント周囲炎(インプラントの歯周病)やアタッチメントの緩み、入れ歯のすり減りなどが起きることがあり、数ヶ月に一度の歯科通院が必要です。

■ デメリット4:口腔内の条件によっては難しい場合も
・顎の骨が極端に少ない
・全身疾患(心臓病・骨粗しょう症など)がある
・口腔内清掃が困難である
このようなケースでは、インプラント治療が難しい場合があります。オーバーデンチャーは比較的条件を選ばない方法ではありますが、事前の診査・診断は必須です。

■ まとめ:インプラントオーバーデンチャーは「いいとこ取り」な選択肢
インプラントオーバーデンチャーは、従来の総入れ歯とインプラントの中間的な治療法であり、費用や手術の負担を抑えつつ、機能性と快適性を手に入れられる優れた選択肢です。
【メリットまとめ】
- 費用が抑えられる(フルインプラントより)
- よく噛める・外れにくい
- 自分で着脱できて清潔
- 手術の負担が比較的軽い
【デメリットまとめ】
- 保険が使えない(自由診療)
- インプラント手術が必要
- メンテナンスが欠かせない
- 口腔・全身の状態によっては不適応も
「総入れ歯が外れて困っている」「インプラントに興味はあるが費用や手術が不安」とお悩みの方は、ぜひ一度、歯科医院でインプラントオーバーデンチャーの相談をしてみてください。無理のない範囲で、快適な口腔環境を手に入れる方法として、検討する価値は十分にあります。
