「保険外でもできるだけ費用を抑えて白い歯を入れたい」とお考えの方に人気なのが、E-MAX(イーマックス)と呼ばれるセラミッククラウンです。見た目が自然で、保険の銀歯とはまったく違う美しさがありながら、比較的手頃な価格で提供されるため、多くの歯科医院でおすすめされています。
しかし、E-MAXクラウンにはいくつかの重要な注意点もあります。特に「割れやすい」性質を理解しないまま装着すると、せっかくの自費治療が短期間で台無しになってしまうこともあります。
今回は、E-MAXクラウンのメリットとデメリット、特に「割れやすさ」について詳しく解説します。
E-MAXクラウンとは?
E-MAXは、正式には二ケイ酸リチウムガラスセラミックという素材で作られた歯の被せ物です。ドイツのIvoclar Vivadent社が開発したもので、高い審美性と生体親和性から、世界中で広く使用されています。
特徴1:天然歯のような透明感
E-MAXクラウンは光を自然に透過させるため、天然の歯に近い美しさを再現できます。前歯など審美性を重視する部位に特に向いています。
特徴2:金属を一切使用しない
E-MAXはオールセラミックなので、金属アレルギーの心配がありません。また、歯ぐきの黒ずみ(メタルマージン)も起きにくいため、時間が経っても見た目が美しいままです。
特徴3:保険外だが比較的安価
保険適用外のため自費診療になりますが、ジルコニアクラウンやメタルボンドなど他の自費クラウンよりも安価に設定されていることが多いです。医院によって価格差はありますが、おおむね5〜8万円程度で提供されていることが多いです(2025年現在)。

最大の弱点:「割れやすさ」
E-MAXクラウンは審美性に優れている反面、強い力が加わると割れてしまうリスクがあることは、ぜひ知っておいていただきたいポイントです。
なぜ割れやすいのか?
E-MAXの材料であるガラスセラミックは硬いものの、引っ張る力や衝撃には弱いという特徴があります。つまり、一定の強度はありますが、「しなる」力に乏しく、強い咬合力(噛む力)や歯ぎしりなどがあると割れてしまうことがあるのです。
特に注意が必要な部位
以下のような部位にE-MAXを使用する場合は注意が必要です。
- 奥歯(特に第一・第二大臼歯):噛む力がもっとも強くかかる場所です。
- 歯ぎしりや食いしばりの癖がある方:就寝中の無意識な力でクラウンに過度な負担がかかることがあります。
- 根管治療後の歯:歯自体がもろくなっており、クラウンにかかる応力がより強くなりがちです。
実際に起きるトラブル例
- 数ヶ月で突然クラウンが割れた
- 食事中に「パキッ」と音がしてクラウンの一部が欠けた
- 仮歯までは快適だったのに、本番のE-MAXクラウンがすぐに壊れた
これらのケースでは、再治療や再製作が必要となり、追加の費用や時間がかかってしまいます。

E-MAXクラウンを長持ちさせるために
歯科医師による適切な設計
信頼できる歯科医院では、E-MAXを使用する部位や咬合(噛み合わせ)状態を慎重に見極めた上で適応を判断しています。強い力がかかる場合は、E-MAXではなくジルコニアなど強度に優れた素材をすすめることもあります。
ナイトガード(マウスピース)の使用
歯ぎしりや食いしばりがある方には、就寝時のナイトガードの使用が推奨されます。クラウンだけでなく、天然歯の保護にもつながります。
適切なケアと定期健診
硬いものを噛む習慣を避け、年に2〜3回は定期健診を受けましょう。割れの予兆や噛み合わせの変化を早期に発見できれば、トラブルの防止につながります。
E-MAXはどんな人に向いている?
E-MAXクラウンは、次のような方に特におすすめです。
- 前歯や小臼歯など力がそれほどかからない部位に白い歯を入れたい方
- 自然な見た目を重視する方
- 金属アレルギーがある、または金属を使いたくない方
- 奥歯に使う場合でも、歯ぎしりがなく咬合力が強くない方
一方で、強い咬合力がある方やブリッジとしての使用を希望する方には、より強度のあるジルコニアクラウンやメタルボンドクラウンのほうが安全な場合があります。

まとめ:E-MAXクラウンは「見た目と費用重視」だが、適応には注意が必要
E-MAXクラウンは、美しさと費用のバランスが非常に魅力的な選択肢です。しかし、「割れやすい」という性質があるため、すべての歯に使えるわけではありません。歯科医師の判断に基づき、適材適所で使うことが重要です。
自費治療だからこそ、長持ちしてこそ価値があります。治療前には必ずメリットとリスクの両方を理解し、自分に合った素材を選ぶようにしましょう。