「噛むと歯が痛いんだけど、虫歯は見つからなかった…」
そんな経験をしたことはありませんか?

実は、歯の痛みの原因は虫歯だけではありません。歯科医院で検査しても虫歯が見つからないのに痛みがある場合、歯科医は他の病態を疑います。今回は、そのような「非虫歯性の歯の痛み」について、歯科医が実際に考える代表的な5つの病態をご紹介します。

1. 咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)

どんな病態?

咬合性外傷とは、「噛み合わせの力が過度に歯やその周囲に加わることで生じるダメージ」のことです。例えば、奥歯にだけ強い力がかかっていたり、歯ぎしり・食いしばりの癖がある人によく見られます。

症状

  • 噛むと痛い(特に硬いもの)
  • 歯が浮いたような違和感
  • 朝起きたときに歯がだるい

原因

・歯ぎしりや食いしばり
・被せ物や詰め物の高さのズレ
・長年にわたる不適切な咬み合わせ

対処法

マウスピースの使用や噛み合わせの調整が行われることが多いです。


2. 歯根膜炎(しこんまくえん)

どんな病態?

歯の根を包む「歯根膜」に炎症が起きることで、噛んだときに痛みを感じます。虫歯がなくても、過剰な咬合圧や感染、あるいは過去の治療が原因で発症することがあります。

症状

  • 噛むと歯がズキッとする
  • 何もしていないときは痛くない
  • 歯が少し浮いて感じることも

原因

・強い咬合圧
・根の先に炎症がある
・根管治療後の慢性炎症

対処法

炎症の原因を特定し、根管治療や噛み合わせの調整を行うことが一般的です。


3. 歯の亀裂(クラックトゥースシンドローム)

どんな病態?

歯に目に見えないほどのヒビ(クラック)が入っている状態です。このヒビが、噛んだときに広がることで痛みを生じます。特に奥歯や銀歯のある歯に多く見られます。

症状

  • 噛んだときに鋭い痛み
  • 特定の方向からの力に敏感
  • 放置すると痛みが慢性化することも

原因

・硬いものを噛んだ
・強い咬合圧
・古い銀歯の下にひび割れが生じることも

対処法

亀裂の深さによって処置が異なります。軽度なら被せ物で保護し、重度なら抜歯が必要なこともあります。


4. 歯周病による炎症や噛み合わせの不安定

どんな病態?

歯周病が進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)が減ってしまい、歯がグラついたり、噛み合わせが変わったりします。この結果、歯に不適切な力が加わって痛みが出ることがあります。

症状

  • 歯が動く感じがする
  • 噛んだときに痛む
  • 歯ぐきが腫れていたり、出血がある

原因

・進行した歯周病
・清掃不良による慢性炎症

対処法

歯周病の治療(歯石除去・歯周ポケットの清掃)を行い、必要に応じて噛み合わせの調整を行います。


5. 非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)

どんな病態?

歯自体に問題がないのに、「歯が痛い」と感じる状態です。実は、耳・顎関節・副鼻腔・神経など、他の部位の異常が原因で歯に痛みを感じることがあります。これを「放散痛(ほうさんつう)」と呼びます。

症状

  • 歯の検査では異常が見つからない
  • 頭痛や耳の痛みもあることがある
  • 顎やこめかみに圧痛がある場合も

原因

・顎関節症
・副鼻腔炎(蓄膿症)
・三叉神経痛などの神経疾患

対処法

歯科だけでなく、耳鼻科や神経内科と連携して診断・治療を進めることが必要です。


まとめ:歯の痛みは「虫歯」だけじゃない

噛んだときに痛みがあると、まず虫歯を疑いますよね。しかし、虫歯以外にもさまざまな原因が潜んでいます。しかも、そのまま放置してしまうと、亀裂が進行して抜歯が必要になったり、慢性的な痛みが癖になったりすることも。

「虫歯はないと言われたけど、やっぱり痛い」という方は、ぜひ一度、別の視点で診てもらいましょう。歯科医には「歯の痛みの探偵」のような役割もあるのです。


この記事のポイント

  • 虫歯がなくても歯が痛むことは珍しくない
  • 歯科医は「咬合性外傷」「歯根膜炎」「クラック」「歯周病」「非歯原性歯痛」などを疑う
  • 早期発見・早期対応が重要

気になる痛みがあるときは、自己判断せず専門家に相談してくださいね。