お子さんの歯がぐらぐらし始めると、「いよいよ永久歯が生えてくるんだな」と成長を実感される親御さんも多いのではないでしょうか。子どもの歯(乳歯)から大人の歯(永久歯)への生え変わりは、子どもの成長の中でも大きな節目です。

けれど、すべてがスムーズにいくわけではありません。「乳歯がなかなか抜けない」「変な場所から永久歯が生えてきた」「歯が足りない?」など、生え変わりにまつわるトラブルも少なくありません。

今回は、乳歯から永久歯への生え変わりの流れと、うまくいかないケースの原因・対処法についてわかりやすく解説します。


🦷 生え変わりはいつから始まるの?

一般的には、6歳ごろから12歳ごろまでの間に乳歯は順番に抜けていき、永久歯へと置き換わっていきます。この時期を「混合歯列期(こんごうしれつき)」と呼び、乳歯と永久歯が同時にお口の中に存在する期間です。

▼ 生え変わりの一般的な順番:

  1. 6歳ごろ:下の前歯(乳中切歯)が抜けて、永久歯が生えてくる
  2. 同時に、**奥歯のさらに奥(第六臼歯:6歳臼歯)**が生えてくる
  3. 7~9歳:上下の前歯が順次生え変わる
  4. 9~12歳:犬歯や奥歯(乳臼歯)が抜けて、永久歯が完成へ
  5. 12歳ごろ:第2大臼歯(12歳臼歯)が生えてくる

このように、最終的には全部で28本の永久歯(親知らずを除く)が揃います。


👶 どうして乳歯が抜けるの?

乳歯の下では、永久歯の“芽”(歯胚:しはい)がゆっくりと成長しています。永久歯が大きくなってくると、乳歯の根を少しずつ吸収していきます(これを「生理的吸収」といいます)

やがて乳歯は支えを失ってぐらぐらになり、自然に抜けていくのです。

つまり、乳歯が抜けるのは永久歯が正しい位置に育っている証拠なんですね。


⚠️ でも、うまく生え変わらないことも…

一方で、すべての子どもが教科書通りにスムーズに生え変わるとは限りません。生え変わりがうまくいかないことには、いくつかの典型的な原因があります。


1.乳歯がなかなか抜けない(晩期残存)

本来であれば抜けるはずの乳歯が、いつまでも口の中に残っている状態を「晩期残存(ばんきざんぞん)」と言います。

原因としては:

  • 永久歯が正しい位置に育っていない
  • 乳歯の根がうまく吸収されなかった
  • 永久歯自体がない(先天欠如)

このまま放置すると、永久歯が変な方向に生えてしまい、歯並びが乱れる原因になります。


2.永久歯が変な位置から出てきた(異所萌出)

「乳歯がまだ残っているのに、永久歯が裏側から生えてきた!」というご相談は非常によくあります。これは「異所萌出(いしょほうしゅつ)」と呼ばれます。

特に多いのが、下の前歯が乳歯の裏側から二列に生える「サメの歯」状態。

この場合、乳歯を早めに抜いてあげれば、永久歯は自然に前に移動することもありますが、放置すると歯列不正(歯並びの乱れ)につながることがあります。


3.歯の本数が足りない(先天性欠如)

全体の10人に1人ほどの割合で、**永久歯の数が最初から足りない(先天性欠如)**ことがあります。

この場合、乳歯が抜けずに残ることもありますが、乳歯は本来“仮の歯”なので、一生使える構造にはなっていません。

乳歯が残っているからと安心せず、将来的に義歯・ブリッジ・インプラント・矯正治療など、必要な処置を計画的に考える必要があります。


4.過剰歯や歯胚の位置異常

逆に、**本来より多く歯の芽ができてしまう「過剰歯」**も、生え変わりを妨げる原因になります。

過剰歯は、特に上の前歯の間などにできやすく、永久歯の萌出(はえること)をブロックしてしまうことがあります。

また、永久歯の芽が正しい位置で育たないと、横向きに埋まったまま(埋伏)になったり、変な方向から出てきたりすることもあります。

これらはレントゲン撮影でしかわからないため、定期的な検診と画像診断が非常に重要です。


🦷 トラブルを防ぐにはどうすればいい?

生え変わりの時期に注意すべきことは以下の通りです。

✅ 定期検診を受けましょう

混合歯列期(6〜12歳)は、半年に1回のレントゲン撮影を含めたチェックが理想的です。永久歯の位置や数、発育状態を早期に確認できます。

✅ ぐらぐら乳歯は無理に抜かない

自然に抜けるのがベストですが、ぐらつきが少なく、永久歯が見えてきている場合は、歯科で抜歯が必要なこともあります。

✅ 歯並びの乱れは矯正相談へ

早めに異常に気づけば、軽度の矯正(床矯正など)で済むケースも多いです。将来の大がかりな矯正を避けるためにも、早期の対応が肝心です。


📝 まとめ:生え変わりは“自然に”でも“要注意”

乳歯から永久歯への生え変わりは、自然に任せていい部分も多い一方で、「見えないところで問題が起きている」こともあるため、定期的な観察と専門的なチェックが欠かせません。

生え変わりがうまくいかないと、次のようなリスクがあります:

  • 歯並びが乱れる
  • 永久歯の位置異常
  • 咬み合わせの問題
  • 発音や顎の成長への影響

これらを未然に防ぐためにも、「ぐらぐらしてるけど大丈夫かな?」と思ったら、かかりつけの歯科医院に気軽に相談することが大切です。


子どもの成長とともに、歯も大きく変化します。乳歯は一時的なものかもしれませんが、永久歯の未来を支える大切な歯です。生え変わりのこの時期を、家族みんなで見守っていきましょう。