患者さんからよくいただく質問の一つに「虫歯になりやすい時期ってありますか?」というものがあります。実は、虫歯には「なりやすい時期」が確かに存在するのです。今回は、年齢別・季節・ライフスタイルなど、さまざまな観点から虫歯のリスクが高まる時期について詳しく解説します。


■ 虫歯のメカニズムをまず理解しよう

虫歯は、「ミュータンス菌」という細菌が食べ物に含まれる糖をエサにして酸を作り、その酸が歯のエナメル質を溶かすことで進行します。この酸が歯にとどまる時間が長いほど、虫歯のリスクは高まります。

つまり、「口の中に糖分がある状態が長時間続く」ことが、虫歯を引き起こす最大の原因です。


■ 年齢別に見る「虫歯になりやすい時期」

① 幼児期(1歳半〜3歳)

この時期は、乳歯が生えそろう時期です。おやつやジュースを摂る習慣が始まり、さらに歯磨きもまだ自分ではしっかりできません。親の仕上げ磨きが必要ですが、それが不十分だと虫歯が急速に進行します。

要注意ポイント:
・甘い飲み物を哺乳瓶で与える
・寝る前の歯磨きができていない
・仕上げ磨きを嫌がる

② 小学生(6歳前後)

「6歳臼歯」と呼ばれる最初の永久歯が生える時期です。この歯は奥に生えるため、磨き残しが多く、虫歯になりやすい歯です。

要注意ポイント:
・6歳臼歯は溝が深くて磨きにくい
・歯磨きの習慣がまだ身についていない
・学校での間食やジュースなど

③ 思春期(中高生)

勉強や部活で忙しくなると、生活リズムが乱れやすくなります。夜更かしや食後の歯磨きの省略が増え、さらに間食も増えるため、虫歯リスクが高くなります。

要注意ポイント:
・食後すぐに歯磨きしない
・夜食・間食が多い
・口内の乾燥が増える(夜更かしによる)

④ 成人期(20〜40代)

この年代は意外にも虫歯になる人が多いです。仕事や子育てに忙しく、歯のケアが後回しになりがちです。また、ストレスや食生活の乱れが口内環境を悪化させます。

要注意ポイント:
・コーヒーや清涼飲料の常飲
・食べながら作業する「ながら食べ」
・定期検診に行かない

⑤ 高齢期(60代〜)

年齢を重ねると唾液の分泌量が減り、虫歯菌が繁殖しやすい環境になります。また、歯茎が下がって歯の根元が露出する「根面う蝕(こんめんうしょく)」という虫歯も増えます。

要注意ポイント:
・唾液の減少(薬の副作用や加齢による)
・義歯やブリッジの不衛生
・歯周病の併発


■ 季節的に「虫歯になりやすい時期」ってあるの?

意外かもしれませんが、季節によっても虫歯のリスクは変動します。

● 夏(7〜8月)

暑い季節は冷たいジュースやアイスクリームなど、糖分の多い飲食物を摂取する機会が増えます。また、汗をかくことで体内の水分が減り、唾液の分泌も減少しやすく、口内の自浄作用が低下します。

● 冬(12〜2月)

冬は空気が乾燥しているため、口の中も乾きやすくなります。さらに、年末年始のごちそうやお菓子、甘い飲み物の摂取が増えることで虫歯のリスクが高まります。

結論: 夏と冬は虫歯ができやすい「ハイリスクシーズン」です。


■ ライフスタイルの変化による虫歯リスク

季節や年齢に限らず、「ライフスタイルの変化」も虫歯のリスクに直結します。

例1:進学・就職・転勤

環境が変わると生活習慣も乱れがちになります。特に一人暮らしを始めたばかりの時期は、食生活が不規則になったり、歯磨きを怠ることも増えます。

例2:妊娠・出産

妊娠中はホルモンバランスの変化やつわりによって、歯磨きが難しくなることがあります。また、間食が増えることで虫歯のリスクも上がります。


■ 虫歯にならないために気をつけたい習慣

  • 食後は30分以内に歯を磨く
  • 砂糖を含む食品は時間を決めて摂る
  • 間食は1日1~2回までにする
  • フッ素入りの歯磨き粉を使う
  • 定期的に歯科医院で検診を受ける(半年に1回が目安)

■ まとめ

「虫歯になりやすい時期」は、年齢・季節・生活環境などによって確かに存在します。特に、幼児期・6歳前後・思春期・成人初期・高齢期、そして夏や冬は要注意です。自分自身や家族のライフステージに合わせた予防を意識することで、虫歯のリスクを大幅に減らすことができます。

「最近甘いものが増えてるな」「歯磨きをサボりがちかも」と思ったら、今日からでも意識を切り替えてみてくださいね。虫歯は予防が何よりも大切です!