「最近、なんとなく頬のあたりが重い」「歯医者に行っても原因がわからない歯の痛みが続いている」――そんな症状に悩まされていませんか?実はそれ、「蓄膿症(慢性副鼻腔炎)」が原因かもしれません。そしてさらに驚くべきことに、歯のトラブルがその蓄膿症の原因になっている場合もあるのです。
本記事では、蓄膿症と歯の関係について、原因、症状、診断、治療法に至るまで詳しく解説します。
蓄膿症(慢性副鼻腔炎)とは?
蓄膿症とは、正式には「慢性副鼻腔炎」と呼ばれる疾患で、副鼻腔(鼻の奥にある空洞)に膿がたまり、炎症が長期にわたって続く状態を指します。通常、副鼻腔には粘液が分泌され、細菌やウイルスを排除する役割がありますが、感染やアレルギー、鼻中隔の湾曲などが原因でその機能が低下すると、膿が溜まり炎症を起こすのです。
代表的な症状は以下の通りです:
- 鼻づまり
- 黄緑色の鼻水
- 後鼻漏(喉に流れる鼻水)
- 頭痛、顔面痛
- 匂いがしない、嗅覚障害
- 慢性的な疲労感

歯と蓄膿症の意外な関係
蓄膿症の原因にはさまざまありますが、近年注目されているのが「歯からくる蓄膿症」、つまり「歯性上顎洞炎」です。
歯性上顎洞炎とは?
上顎には上顎洞という副鼻腔があり、上顎の奥歯(特に第一大臼歯、第二大臼歯、第三大臼歯)の歯根がこの上顎洞のすぐ下、あるいは内部に近接しています。そのため、虫歯や歯周病、歯の根の感染(根尖病巣)が上顎洞に波及し、副鼻腔炎を引き起こすことがあるのです。
これは「歯性上顎洞炎」と呼ばれ、一般的な蓄膿症と区別されます。片側だけの症状であることが多く、通常の副鼻腔炎治療では改善しないケースも多々あります。

どんな歯のトラブルが原因になるのか?
歯性上顎洞炎の原因となる歯のトラブルには、次のようなものがあります:
- 虫歯による根尖性歯周炎
虫歯が神経まで達し、歯の根の先に膿がたまる状態です。この膿が上顎洞に感染を起こすことがあります。 - 歯周病(歯槽膿漏)
歯を支える骨が炎症で溶けていく病気で、進行すると副鼻腔にまで波及します。 - 抜歯後の感染
上顎の奥歯を抜いた後、上顎洞と口腔が交通してしまう「口腔上顎洞瘻(ろう)」ができることがあり、ここから副鼻腔に感染が広がる場合があります。 - インプラント手術後の合併症
インプラントが上顎洞を突き破ってしまったり、感染が起こったりすることで副鼻腔炎を発症するケースもあります。

歯性上顎洞炎の診断と治療
診断方法
歯性上顎洞炎は、歯科と耳鼻科の両方で連携して診断することが望ましいです。以下のような検査が行われます:
- パノラマX線やCT撮影による歯と副鼻腔の確認
- 口腔内診察で虫歯や歯周病の有無をチェック
- 鼻鏡や内視鏡を使った副鼻腔の観察

治療法
根本的な原因が歯にあるため、耳鼻科で抗生物質や点鼻薬を処方しても再発しやすく、完治しにくいのが特徴です。以下のようなアプローチがとられます:
- 原因歯の治療
感染した歯を根管治療で保存するか、抜歯する必要があります。 - 上顎洞の洗浄や手術
炎症が重度の場合、副鼻腔を内視鏡で洗浄したり、ポリープや膿の除去手術が必要になることもあります。 - 歯科と耳鼻科の連携治療
歯の感染と副鼻腔の炎症を同時に治療することが、最も効果的なアプローチです。
自分で気をつけるべきポイント
以下のような症状がある場合は、歯性上顎洞炎を疑ってみると良いでしょう:
- 片側だけの鼻づまりや頬の痛み
- いつまでも治らない片側の奥歯の痛み
- 抜歯後に鼻から水が出るようになった
- 口臭がひどく、歯と鼻の両方に違和感がある
また、虫歯や歯周病を放置せず、定期的に歯科検診を受けることが、蓄膿症の予防にもつながります。

まとめ
蓄膿症は「鼻の病気」というイメージが強いかもしれませんが、歯と深く関係しているケースも少なくありません。とくに上顎の奥歯に異常がある方は、それが副鼻腔炎の引き金になっている可能性もあるため、耳鼻科と歯科の両方の視点で診てもらうことが重要です。
慢性的な鼻の不調や、原因不明の歯の痛みに悩まされている方は、一度「歯性上顎洞炎」を疑ってみてはいかがでしょうか?早期発見・早期治療が、症状改善のカギとなります。