舌における様々な疾患 

舌には腫瘍や炎症、舌痛症など様々な疾患が起こります。中には表面の色や形態が変わるもの、痛みを伴うものなど病態も様々です。舌の形態や色は全身的な病気が反映されることもあります。中には悪性のものもあるので、気になる場合には一度歯科医院にて確認してもらう必要があるでしょう。今回は臨床において比較的よく見るものや重要な疾患をピックアップしているので確認してみましょう。

〇舌に起きるトラブル 腫瘍 <よく見る腫瘍>

腫瘍は時に命を脅かすものなので皆さんが気になるものかと思います。舌にできる腫瘍は基本的に表面からみてわかるものが多く、色が変わったり、周囲の形態が変わったりと判断しやすいことが多いです。

①乳頭種

②血管腫

③線維種

④扁平上皮癌

が比較的よく遭遇する腫瘍と重要な疾患です。それぞれ見てみましょう。

●①乳頭腫

乳頭腫は舌だけでなく歯茎や口蓋にもできることがあります。表面が樹枝状やカリフラワー状になるのが典型的です。良性の腫瘍で切除することが一般的です。悪性のものではないので心配はいりませんが、切除したものは念の為に病理検査で確定診断をすることもあります。

●②血管腫

舌や口の粘膜にできるもので血管が増殖したために起こるものです。比較的若い方にもできることがあります。間違って噛んだ後にできる血豆とは異なる病態です。治療としては手術で取ることが多かったのですが、最近ではレーザーを使用した治療方法も出てきています。

●③線維腫

舌や頬粘膜にできることが多いです。無症状なことが多いですが、触るとしこりのようなものが触れます。ゆっくりとした発育で表面的に色に違いはありません。切除することが基本となります。乳頭腫と同様に切除後は病理検査を行うこともあります。

●④扁平上皮癌

口の中で起こるがんの中で最も頻度が高いのは舌癌です。その中では扁平上皮癌がほとんどです。50代以上の男性に多いとされています。飲酒や喫煙、入れ歯による慢性的な刺激が原因として考えられています。リンパ節の転移や肺や骨への転移も起こることがあり、早期に治療することが必要です。扁平上皮癌は上皮性の腫瘍なので見た目で異常な形態をしている場合がほとんどです。色が変わったり、舌の形が部分的に変だったりする場合は早めに受診するようにしましょう。

〇舌に起きるトラブル 炎症 <よく見る炎症>

口内炎は想像がつきやすいかもしれませんが、舌炎は馴染みがないかもしれません。口内炎が舌にできて痛い場合も舌炎の一つとして考えられます。そのほかに全身的な疾患から舌に炎症が起こる場合があります。どのようなものがあるか確認しましょう。

①鉄欠乏性貧血による舌炎
②悪性貧血に伴うハンター舌炎
③カンジダ感染に伴う正中菱形舌炎
④口腔乾燥症に伴う舌炎

以上が比較的多くみられる舌炎の状態です。

①は鉄の減少によるもので、中年以降の女性に見られることが多いとされています。        ②はビタミン12の欠乏によるものです。                           ①②ともに舌の乳頭萎縮が起こります。                             ③は舌の中央あたりにできる赤い班です。                            しみる症状や違和感を呈することがあります。                          カンジダ菌との関連が指摘されています。④は唾液分泌の低下に伴う舌炎です。

①から④は全身状態や疾患に起因する舌の炎症です。                      ④は飲み薬による副作用でも生じる場合があります。                      全身疾患の改善や口腔乾燥を防ぐような薬、うがい薬などで症状を改善させる場合がほとんどです。 ③に関してはカンジダ菌に由来していなければ治療せずに経過観察することもあります。      舌は全身疾患を映す鏡のようなことを言われることもあります。                 全身疾患がこのように舌に影響を与えることもあるのです。

〇舌に起きるトラブル 舌痛症 <舌痛症の症状>

舌痛症は口の中に生じる原因不明の疼痛であることが知られています。症状としては舌の灼熱感、ピリピリとした痛みなどが慢性的に続きます。                           舌自体には形態や色調に異常がないにもかかわらず、そのような症状が出てしまうことが特徴的です。   

原因は特定されていませんが、ストレスや加齢に伴うホルモン量の減少などが可能性としてあげられています。                                          治療法については原因がわかっていないので、対症療法となります。時に抗うつ薬などを処方する場合があり、歯科領域での対処が難しい場合には精神科など医科に紹介する場合もあります。

〇まとめ

舌は形や色の変化が内臓とは異なり、日頃自身で確認可能です。                 今までと違う状態になり、色や形、痛みが変わらないのであれば一度歯科受診をお勧めします。   中には口内炎と思っていたものが、悪性腫瘍である可能性もあります。               定期検診をされていればチェックをされると思いますが、日頃行っていない方は虫歯や歯周病のチェックとともに舌のチェックも行ってもらうようにしましょう。

患者さんの中には舌の清掃を一生懸命に行う方がいますが、舌の表面が荒れてしまいかえってよくないことがあります。 

たしかに舌に汚れがつくと舌苔とよばれ口臭などの原因となることがあります。しかし、ブラシでサッと落とす程度にしておいた方が良いと考えられます。