歯科医院で歯石取り(スケーリング)を行う際、「なぜ一度で終わらないのか?」「何回も通わなければならないのか?」と疑問に思う方は多いのではないでしょうか?特に初めて歯石取りを受ける方や、久しぶりに歯科医院を訪れた方にとっては、「一回で全部取り除いてほしい」と感じるかもしれません。しかし、歯石取りが複数回に分けて行われるのには、しっかりとした理由があります。
この記事では、なぜ歯石取りが複数回にわたって行われるのか、その理由を詳しく解説します。
1. 歯石の付き方と除去の難しさ
歯石とは、歯の表面に付着したプラーク(歯垢)が唾液中のミネラルと結びつき、硬化したものです。特に長期間放置された歯石は、非常に硬くなり、歯科医院の専門的な器具を使わなければ除去できません。
また、歯石は歯と歯ぐきの境目だけでなく、歯周ポケットの奥深くにも付着することがあります。こうした深い部分の歯石を一度に除去すると、歯ぐきを痛めることもあるため、数回に分けて丁寧に取り除く必要があります。

2. 歯科医院の処置方法と時間の制約
一般的に、歯石取りは「スケーリング」と「ルートプレーニング」に分かれます。
- スケーリング:表面の歯石を除去する処置
- ルートプレーニング:歯周ポケットの奥に入り込んだ歯石を除去し、歯の根面を滑らかにする処置
軽度の歯石であれば1回で終わることもありますが、歯周ポケットの奥にまで歯石が入り込んでいる場合、1回の処置時間ではすべてを取り除くのが難しく、複数回に分けて処置することが必要になります。
また、歯科医院の診療時間には限りがあり、患者さんの負担を考えて1回の処置時間を30分〜60分程度に設定することが一般的です。そのため、一度にすべての歯石を取り除くのは現実的ではなく、複数回の通院が必要になります。
3. 歯ぐきや歯への負担を減らすため
歯石を一度にすべて除去すると、歯ぐきが急激にダメージを受けることがあります。特に歯周病が進行している場合、元々炎症があるせいで、一気に除去しようとすると歯ぐきが一時的に腫れたり、出血しやすくなったりする可能性があります。
また、歯石が除去されることで、歯の根がむき出しになり、一時的に知覚過敏のような症状が出ることもあります。これを防ぐためにも、歯石取りは数回に分けて慎重に進めるのがベストなのです。
4. 口の中の状態に合わせた治療計画
歯石の量や付着している場所、歯ぐきの健康状態によって、治療の進め方は異なります。例えば、軽度の歯石なら1回で終わることもありますが、歯周病が進行している場合は、4回以上に分けて徹底的にクリーニングすることが必要になります。
一般的な歯石取りのスケジュールは次のようになります。
- 軽度の歯石:1回〜2回で完了
- 中等度の歯石(歯周ポケット4mm以上):2回〜3回
- 重度の歯石(歯周病が進行している場合):4回以上
特に重度の歯周病の場合、スケーリングだけでなく、歯ぐきを切開して歯石を取り除く「歯周外科治療」が必要になることもあります。
5. 効果的な治療のために段階的に進める
歯石取りを数回に分けることで、患者さん自身の口腔環境が徐々に改善され、より良い治療効果が得られます。
例えば、最初の歯石取りで歯ぐきの炎症が軽減されると、次回の治療時により奥深くの歯石が取りやすくなるというメリットがあります。また、歯石を除去した後のセルフケア(歯磨きやフロスの習慣)が改善されることで、再発を防ぐことができます。
6. 自宅でできる歯石予防
歯石は一度できると自分では取れませんが、予防することは可能です。
- 正しい歯磨き習慣を身につける(1日2回以上)
- デンタルフロスや歯間ブラシを活用する
- 定期的に歯科検診を受ける(3〜6ヶ月に1回)
- 唾液の分泌を促す(よく噛んで食べる、キシリトールガムを活用する)
これらを実践することで、歯石の蓄積を最小限に抑えることができます。
まとめ
歯石取りが複数回にわたる理由は、単に時間の問題ではなく、
- 歯石の付着場所や量の違い
- 歯ぐきや歯への負担を軽減するため
- より効果的な治療を行うため
といった医学的な理由があるためです。
一度の治療で歯石をすべて取り除くのは難しく、むしろ複数回に分けて治療を行うことで、より健康的な口腔環境を手に入れることができます。
定期的な歯科検診と日々のセルフケアをしっかり行い、歯石の蓄積を防ぐことが大切です。歯石を溜めない習慣を身につけ、健康な歯を維持しましょう!