こんにちは

唾液腺は、唾液、すなわち唾を作り出す組織です。

唾液腺にも、さまざまな病気が生じます。

今回は、唾液腺の病気についてお話しします。

〇唾液腺とは

唾を作る唾液腺は、大唾液腺と小唾液腺の2種類に分けられます。

大唾液腺は、耳下腺、顎下腺、舌下腺の3つで、それぞれが2つずつあります。

小唾液腺は、お口の中に無数にあります。

大唾液腺は導管という管を通して、お口の中に唾液を放出しますが、小唾液腺は比較的浅いところにあることもあり、導管を介さずに唾液をお口の中に出します。

〇唾液腺の病気

唾液腺に生じうる病気について、代表的なものをご紹介します。

●粘液嚢胞

粘液嚢胞は、唾液が水風船のように溜まったものです。

小唾液腺の唾液の出口がケガなどの原因により塞がり、唾液が溜まってしまうことで生じると考えられています。

粘液嚢胞はある程度大きくなると潰れて萎みますが、しばらくすると唾液が溜まり再び大きくなります。

大きくなったり小さくなったりするのが、粘液嚢胞の特徴です。

●唾石症

唾石症とは、カルシウムが固まってできた唾石が唾液腺の内部や唾液腺からの導管に生じる病気です。

唾石ができると、唾液の出口がなくなるため、唾液の行き場がなくなり、結果として唾液腺が腫れます。

唾石症の多くは顎下腺に生じます。

●ガマ腫

ガマ腫とは、舌下腺が傷つき、唾液が漏れ出すことで、舌下腺の周囲が腫れる病気です。

ガマガエルの喉みたいに見えることから、この名前がつけられたようです。

ガマ腫になると、舌の下が腫れますが、痛みを感じることはほとんどありません。

●唾液腺炎

唾液腺炎は、唾液腺が炎症を起こした病気です。

原因は、細菌やウイルスなどの病原微生物や唾石、自己免疫疾患などです。

なお、唾液腺炎はどの唾液腺でも起こりやすいというわけではなく、顎下腺や耳下腺に起こりやすい傾向があります。

急性の唾液腺炎では痛みや腫れが生じますが、慢性の唾液腺炎ですと痛みや腫れはほとんどなく、唾液の出が悪くなるといった症状が多くなります。

●流行性耳下腺炎

流行性耳下腺炎とは、おたふく風邪として知られている病気です。

その原因は、ムンプスウイルスで、ウイルスがついたものを触ったり、ウイルスが含まれた唾液を吸い込んだりすることです。

2~3週間の潜伏期を経て、両側、もしくは片側の耳の下あたりの腫れや痛み、発熱などを生じます。

流行性耳下腺炎の原因であるムンプスウイルスには、ワクチンが開発されており、90%ほどの感染を予防する効果があります。

●唾液腺腫瘍(良性腫瘍)

唾液腺にも腫瘍が生じます。

唾液腺腫瘍のほとんどは耳下腺に生じ、唾液腺腫瘍の65~80%を占めます。

残りの頻度は、顎下線(約10%)、舌下腺(1%)、小唾液腺(10~20%)です。

耳下腺腫瘍の80%は良性腫瘍です。

したがって、唾液腺腫瘍のほとんどが良性腫瘍ということになります。

●唾液腺腫瘍(悪性腫瘍)

悪性腫瘍も頻度は少ないながらも存在します。

唾液腺腫瘍の悪性腫瘍の頻度は、耳下腺腫瘍の20%、顎下腺腫瘍の40%、舌下腺腫瘍の1%以下です。

悪性腫瘍のタイプは、腺房細胞癌、粘表皮癌などが多いです。

〇唾液腺疾患の治療法

唾液腺の病気の治療法をそれぞれ分けて説明します。

●粘液嚢胞

粘液嚢胞の治療法は、摘出術です。

粘液嚢胞の周囲の粘膜を切開し、嚢胞を剥離して摘出します。

このとき、粘液嚢胞の周囲にある小唾液腺も摘出します。

●唾石症

唾石症の治療法は、摘出術です。

唾石症のほとんどは顎下腺唾石なので、ここでは顎下腺唾石の治療法を説明しています。

摘出術の方法は、唾石の位置によって異なります。

唾石の位置が、第一大臼歯(いわゆる6歳臼歯)より前にある場合は、お口の中を切開して摘出します。

第一大臼歯より奥にある場合は、顎下腺の本体に唾石があると考えられます。

唾石が前方に移動してくるのを待ってから、お口の中から摘出します。

前方に移動してこない場合は、顎下腺ごと唾石を摘出することになります。

●ガマ腫

ガマ腫は、周囲に舌神経や動脈などがあるため、摘出するのはとても難しいです。

このため、ガマ腫の治療法としては、開窓術という治療法が選ばれます。

開窓術は、ガマ腫を全部取るのではなく、ガマ腫の頂上付近の粘膜を一部取り除き、ガーゼを詰めておく治療法です。

ガマ腫が自然に小さくなるようにすることで、ガマ腫の解消を図ります。

開窓術でも改善しにくい場合は、舌下腺を摘出することになります。

●唾液腺炎

唾液腺炎の治療は、抗菌薬を使った薬物治療です。

サワシリン®︎などの広範囲ペニシリン系薬が第一選択ですが、アレルギーがある場合はクラリス®︎などのマクロライド系薬が選ばれます。

痛みに対しては、非ステロイド性消炎鎮痛薬を使い、痛みの緩和を図ります。

●流行性耳下腺炎

流行性耳下腺炎は、ムンプスウイルスが原因ですが、ムンプスウイルス用の抗ウイルス薬はありません。

ウイルス性の病気には抗菌薬も効果がありません。

このため、流行性耳下腺炎の治療は、栄養管理と安静が中心になります。

痛みや発熱に対しては、非ステロイド性消炎鎮痛薬を使います。

●唾液腺腫瘍(良性腫瘍)

良性の唾液腺腫瘍の治療は、腫瘍摘出術です。

良性の場合、痛みなどの自覚症状に乏しいことがありますが、放置しておくとどんどん成長して大きくなる上、中にはがん化する可能性があるタイプもあるので、早めの摘出が大切です。

●唾液腺腫瘍(悪性腫瘍)

悪性の唾液腺腫瘍の治療は、外科的に完全な切除術です。

悪性腫瘍の種類によっては、拡大切除術や首のリンパ節の切除術も組み合わせて行われます。

また、放射線治療や抗がん剤治療が行われることもあります。

〇まとめ

今回は、唾液腺に起こる病気についてお話ししました。

唾液腺には、

①粘液嚢胞

②唾石症

③ガマ腫

④唾液腺炎

⑤流行性耳下腺炎

⑥唾液腺腫瘍(良性腫瘍)

⑦唾液腺腫瘍(悪性腫瘍)

などの病気が起こります。

その多くは、歯科での治療が可能です。

もし、これらの症状でお悩みの方は、一度当院でご相談ください。