個人情報が含まれておりますので時期や年齢はずらしてあります。
〇抜歯に至る道筋は人それぞれ、歯それぞれ。実例で解説します。
〇きっかけ
2020年6月に定期健診で来院。右下の臼歯部分の歯肉にフィステル(膿の出口のニキビのようなもの)があることを指摘しましたところ、時々歯肉が膨らんで腫れたり噛むと痛かったりしたとのことでした。


〇所見

右下奥歯のレントゲン写真です。 左から2番目の歯の根尖部分だけ黒い影があります。 これは歯の根っこにばい菌が取り付いて、それが原因で炎症が起こり、 根尖の骨が溶けて不良肉芽(炎症性のお肉)に置き換わっている様子が写っています。
レントゲンで歯の下や周りの部分に白いモヤのような網目状の物が写っていますが、 これがあごの骨です。
「歯は歯茎に生えている」と思っている方は結構多いですが、実際には歯はあごの骨に植わっています。歯肉は骨を取り囲むように3ミリ~5ミリの厚みで一枚取り巻いているだけです。
〇当日の処置
今後、割とすぐに腫れたり痛んだりしそうなので、 それを未然に防ぐ意味で抗生物質を処方しました。

〇何が起きていたのか?

右下の6番の根尖で炎症が起きているレントゲン写真です。 2本の歯根が写っており、それぞれに一本ずつ白いものが埋め込まれております。 (右隣の歯にも白いものが一本埋めこまれています)
①根管治療中にどこかからかばい菌が紛れ込んでしまい、感染を起こした。
②元々ばい菌が入り込んだので根管治療をしたが、実はばい菌を追い出しきれなかった。
①が原因なのか②が原因なのかは今となっては検証のしようがありませんが、 どちらかが原因ではあります。
参考:虫歯を放置してしまった結果あごの骨の中で炎症が起きたイラストを揚げます。

右端の歯の根尖に炎症がある状態を示しています。
今回は「虫歯放置」ではなく「根管治療がしてある歯」ですが、 「根尖の炎症」という意味では同様のことがおきております。
〇なぜ抜歯という決断をしたのか?

抜かずに治療する場合の段取りをイラストで表しています。
要は、神経の入っていた管「根管」が汚染されているのでそこをきれいにしましょう、という話です。
根管がきれいになれば、根尖病巣(炎症)は治ります、が、きちんときれいになったかどうかは根管に顕微鏡を持ち込んで1000倍程度の拡大しないと観察できません。現実的に無理です。
根管治療に使うマイクロスコープは倍率が25倍程度ですからばい菌自体は見ることができません。

そしてこの歯は炎症のせいか、根尖の歯質が溶けてしまっているようにも見えます。根が短いですね。

以上の事より、この歯の保存治療は成功率がかなり低い、と予測ができます。
患者さんと相談したところ、 「何回も治療にかかって結局抜歯になる可能性が高いのなら抜いてほしい」 とのことで抜歯になりました。

〇その後の転機は?
抜歯直後はもちろん歯茎は凸凹です。何かを入れることはできません。
抜歯後約一週間で穴のまま「薄皮」一枚で覆われます(上皮と言います)。
ここで、やっと外界と体内がくっきり区別されます。
その後徐々に穴が浅くなるように歯肉や骨が上がって行きます。


抜歯後5年のレントゲン写真です。歯があった痕跡はなくなっておりますが、抜歯後半年では「根っこが埋まっていたであろう痕跡」が見えることが多いです。

さて、抜歯後半年で抜けた部分を入れることにあんりました。この処置を補綴と言います。
欠損補綴には3種類のやり方があります。
一つは上の写真うような義歯(入れ歯)
もう一つはインプラント
もう一つはブリッジです。
それぞれのやり方には長所と短所があり、どれが正解、ということではありません。
今回は患者さんと相談の上、一本分の義歯を製作して入れてあります。
5年間問題なく機能しております。























