日常生活の中で、「なんだか口の中がねばねばする」「唾液が糸を引く感じがする」「口の中が気持ち悪くて集中できない」——そんな不快な感覚を覚えたことはありませんか?実はそれ、「口腔異常感症(こうくういじょうかんしょう)」という症状の可能性があります。

今回は、この「口腔異常感症」について、原因や症状、治療法まで詳しく解説していきます。日々のモヤモヤの正体が分かることで、少しでも安心できる手助けになれば幸いです。


口腔異常感症とは?

口腔異常感症とは、医学的な異常が見つからないにもかかわらず、口の中に違和感や不快感を感じる病気です。「ドライマウス(口腔乾燥症)」や「口腔灼熱症候群(Burning Mouth Syndrome)」とも関連があり、精神的・神経的な要因が関与していることが多いとされています。

口の中の「粘つき」「ねばねば感」は、この症状の代表的な訴えの一つです。他にも「苦味がある」「しびれる」「ざらざらしている」「変な味がする」など、人によって訴え方はさまざまです。


どんな症状があるの?

口腔異常感症の主な症状として、以下のようなものが挙げられます:

  • 口の中がねばねばして不快
  • 唾液が異常に多く感じる、あるいは少なく感じる
  • 舌がざらざら、ピリピリする
  • 金属のような味がする(味覚異常)
  • 口の中が乾くのに唾液は出ている感覚
  • 何かが張り付いている感じがする
  • 口臭があると感じるが、他人には指摘されない

これらの症状は客観的な検査では異常が見つからないため、本人にとってはつらくても、周囲に理解されにくいという特徴があります。


なぜ起こるの?原因は?

口腔異常感症の原因は複数あり、明確に特定できないことも多いですが、以下のような要因が関与していると考えられています:

1. ストレスや不安、うつ状態

心理的なストレスは、口腔内の知覚過敏や異常感を引き起こすことがあります。うつ病や不安障害を患っている人に多く見られ、心身のバランスが崩れているときに発症しやすいです。

2. 自律神経の乱れ

自律神経は唾液の分泌や口腔内の状態を調整しています。交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、唾液の量や性質が変化し、ねばねば感などの不快症状を招くことがあります。

3. ホルモンバランスの変化

更年期などで女性ホルモンの分泌が変化すると、ドライマウスや味覚異常などの症状が現れやすくなります。

4. 薬の副作用

抗うつ薬や抗不安薬、高血圧の薬などは、口の中の乾燥や異常感を引き起こすことがあります。

5. 神経系の異常

感覚神経の異常な興奮や機能障害によって、実際には存在しない「違和感」を感じるケースがあります。


どこで診てもらえるの?診療科は?

口腔異常感症の診断と治療には、以下のような診療科が関わることが多いです:

  • 歯科口腔外科:まずは虫歯や歯周病などの器質的な問題がないかを確認します。
  • 心療内科/精神科:精神的要因が関与している場合、心療内科の治療が有効です。
  • 耳鼻咽喉科:味覚や唾液の異常などの検査が必要な場合。

初めは歯科や口腔外科を受診し、必要に応じて他科へ紹介される流れが一般的です。


どうやって治すの?

口腔異常感症の治療は、原因が多岐にわたるため個別対応が必要です。以下のようなアプローチが行われます。

1. カウンセリング・心理療法

認知行動療法などの心理的アプローチによって、異常感を軽減させる治療法です。患者さん自身が「身体的な病気ではない」と理解することが第一歩になります。

2. 薬物療法

症状に応じて、以下のような薬が使われることがあります。

  • 抗うつ薬(SSRI、SNRIなど)
  • 抗不安薬
  • 神経障害性疼痛に使われる薬(リリカ、ガバペンチンなど)

ただし、すぐに効果が出るわけではなく、数週間から数ヶ月かけて徐々に改善を目指す形になります。

3. 唾液の分泌を促す対策

唾液腺マッサージや口腔内保湿ジェル、ガムを噛むなどの工夫で、口の中の不快感を軽減することもあります。


日常生活でできるセルフケア

  • ストレス管理:リラックスする時間を意識的に取る、趣味に没頭するなどの工夫を。
  • 水分補給:こまめに水を飲むことで、口腔内の潤いを保ちやすくなります。
  • 口腔ケア:口腔内を清潔に保つことで不快感を減らせることがあります。
  • 禁煙・節酒:口腔内の乾燥を防ぐ意味でも有効です。

まとめ:ねばねばの正体を知って、心も口も軽くしよう

「口の中がねばねばする」「何かおかしいけど原因がわからない」——そんな症状に悩まされているなら、それは口腔異常感症かもしれません。目に見えない症状だからこそ、気のせいにされやすく、苦しんでいる人は多くいます。

ですが、決して「我慢」する必要はありません。専門の医療機関に相談することで、少しずつ改善を目指せます。あなたの感じている不快感は、あなたにしかわからない大切なサインです。どうかその声に耳を傾けて、適切なサポートを受けてください。