こんにちは

日本の医療制度は、国民皆保険のもと、健康保険によって支えられていることはご存知の通りです。

歯科でも虫歯や歯周病など多くの治療が健康保険で受けられます。

ところが歯科治療は、健康保険の適応を受けていない治療の種類も多く、選択肢の広さが歯科治療の特徴とも言えるほどです。

そこで歯科治療を受けに来られた方々が疑問に思うのが、健康保険と健康保険外の歯科治療の違いです。

この違いは一体何なのでしょうか。

今回は、健康保険での歯科治療と健康保険の適応外の歯科治療の違いについてお話しします。

〇保険診療について

まずは、健康保険での治療についてご説明します。

●保険診療とは

保険診療とは、国民健康保険など公的な健康保険に加入している人が受ける公的医療制度の対象となる診療のことです。

保険診療は、健康保険に加入しているすべての国民の健康を保つため、どの地域のどの病院や診療所で診療を受けても、同じ質の医療が受けられるような仕組みになっています。

この仕組みを支えるため、診療内容に応じた治療費が画一的に決められており、費用も窓口でご自身で支払う金額が原則的に3割だけで、残りは保険組合が負担します。

例え医療費が高額になった場合でも、高額療養費制度で払い戻しを受けることができます。

ただし、病気の治療だけが対象で、病気の予防や、美容整形などには使うことができません。

●医科と歯科の違い

医科も歯科も保険診療で診療を受けられますが、両者には違いがあります。

医科の保険診療は、医科の診療のほとんどをカバーしています。

例外といえば、入院したときに個室を選んだ場合に発生する差額ベッド代やレーシックなどの視力矯正手術、美容整形の治療費、男性型脱毛症の治療くらいです。

〇歯科治療での保険診療と保険外診療の違い

では、ここで歯科治療での保険診療と保険外診療の違いについてみていきましょう。

●歯型のとり方の違い     

歯型取りは、歯科治療では欠かせない処置のひとつです。

被せ物や詰め物、入れ歯、矯正治療、骨折の治療など、幅広い治療で行われています。

歯型取りにも、保険診療と保険外診療では違いがあります。

保険診療では、アルジネートという水を入れれば固まる粘土のようなものと、寒天という温めると軟らかくなるものを組み合わせた方法での歯型取りが一般的です。

保険外診療では、シリコンというプラスチック系の歯型取りをすることが多いです。

保険診療の歯型取りは低コストなのが利点ですが、精度という点では保険外診療のシリコンに劣ります。

セラミッククラウンのような被せ物治療をするときなど、精度の高い治療が求められる場合は、シリコン系の歯型取りの方が適しています。

●被せ物治療での違い

被せ物治療は、保険診療ではいわゆる銀歯です。

最近では、CAD/CAM冠というコンポジットレジンというプラスチックタイプの被せ物も普及しています。

一方、保険外診療ではジルコニアクラウンになります。

ジルコニアクラウンは、すべてジルコニアで作られたフルジルコニアクラウンと表面をセラミックで装飾したジルコニアポーセレンクラウンなどに分けられます。

両者の違いは、仕上がりです。

ジルコニアポーセレンクラウンは、本物の歯と同じような自然な色合いや光沢感が得られます。

しかも強度もしっかりと確保されています。

保険診療の被せ物は、審美性は二の次です。

銀歯は言うに及ばず、CAD/CAM冠も色こそ白色ですが、光沢感を伴っておらず、不自然さが否めません。

強度も弱いので、破損のリスクもあります。

仕上がりの自然さや強度を求めるなら、保険外診療のセラミッククラウンしか選択肢がありません。

●入れ歯治療での違い

保険診療の入れ歯治療は、ベースの部分をレジンというプラスチックで作ったレジン床というタイプになります。

保険外診療の入れ歯は、ベースの部分を金属で作った金属床というタイプや、部分入れ歯の金具を目立ちにくいプラスチックにしたノンクラスプ義歯が多いです。

レジン床義歯は、厚みがある上、食べ物や飲み物の温度が伝わりにくいので違和感が大きいです。

金属床の入れ歯は、厚みも薄く、食べ物や飲み物の温度が伝わるので、違和感が少ないです。

ノンクラスプ義歯は、目立ちにくさが優れた入れ歯です。

使っているときの装着感や目立ちにくさを求めるなら、保険外診療の入れ歯の方がおすすめです。

●根管治療での違い

根管治療とは、歯の根の治療です。

深いところまで進んでしまった虫歯の治療では、根管という歯の根の中の空洞に細菌が入り込んでいる可能性が高いです。

このため、根管の中を消毒してきれいにする根管治療を行うわけですが、根管は内部だけでなく、入り口もとても狭いです。

そこで、開発されたのがマイクロスコープを使う根管治療です。

マイクロスコープを使って、根管の入り口や根管内部の状態を把握し、治療の精度を高めます。

マイクロスコープはたいへん高額なので、保険診療でも根管治療は受けられますが、マイクロスコープを導入するのは困難です。

保険外の根管治療なら、マイクロスコープを使った精密な根管治療が受けられます。

●インプラント治療

その他の違いとしては、インプラント治療が挙げられます。

インプラント治療は、歯を失ったときに、人工の歯根をその部分に埋めて、その上に上部構造物をいう人工歯をつける治療です。

本物の歯と同じような仕上がり、噛み合わせなどが得られるのが利点の治療ですが、原則的に保険診療では受けられません。

保険外診療なら、インプラント治療を受けられます。

〇まとめ

今回は、健康保険を使った歯科治療と、保険外の歯科治療の違いについて、お話ししました。

低価格で全国どこでも均一な治療が受けられるのが、保険診療の利点です。

反面、治療方法の選択に制限があり、より審美性の高い治療やより精度の高い治療を求めることができないのが保険診療の難点です。

保険外診療での歯科治療はさまざまな方法が開発されており、治療費が高額になりますが、保険診療の適応を受けていない優れた選択肢がたくさんあります。

また、保険診療は病気の治療を目的としており、病気の予防はできませんが、保険外診療なら病気の予防も図れます。

病気は治療するより予防できればいいということは言うまでもないでしょう。

保険外診療にはこのような利点があります。

健康保険を使った歯科治療もいいのですが、より優れた治療を求めるなら、保険外診療の方がおすすめです。