マイクロスコープを用いる治療とは

マイクロスコープ(以下マイクロ)を使用した治療にはメリットがあります。非常に細微なものを確認できるようになり、治療の成功の可能性を上げることができると思われます。しかし、マイクロ自体の機材が高価なため、全ての医院に導入されているわけではありません。どういった治療にマイクロが使用されるのか、マイクロの基本を確認していきましょう。

〇マイクロスコープを使った治療って何? マイクロの基本

歯科医院で用いるマイクロは肉眼では確認できないようなものを確認することができるツールです。 口の中という狭い場所の中の小さい歯の治療という細かい部位の治療には、細かいものを見ることができるツールがある方が成功しやすいと考えるのは想像しやすいと思います。            肉眼の20倍以上の拡大率があり細微を確認することができるようになります。                

たまに勘違いされる方がいますが、ルーペや拡大鏡とは異なります。                ルーペや拡大鏡は拡大できてもせいぜい8倍程度です。                     ルーペなどはメガネの様に装着するものや頭にヘルメットの様に被せるものです。         機材自体大きくはありません。                                

マイクロは外付けの機械を術者が覗き込んで確認するものになります。               機材自体が大きく値段にも差があり、ルーペなどは良いもので30万円前後、マイクロは約350万円〜というものです。                                         

歯科医はマイクロ自体は良いものと考えている方が多いですが、値段がネックで導入していない、出来ない場合もあります。

〇マイクロスコープを使った治療って何? どのような治療に使う?

マイクロを使用することが可能な治療はいくつかありますが、特に使用する頻度が多いのは根管治療でしょう。                                            

歯の根の中の形態やヒビなどの形態異常などを確認することが強みです。               歯は奥歯になるにしたがって、歯根が2本や3本になります。                   神経が入っている根管も奥歯になると多くなり、4根管になる場合や根管が雨どいの様な形になる樋状根というものもあります。                                   

根管の形態が複雑になると器具が上手く到達できているか判断しにくく、特に根管治療においては肉眼での治療では盲目的に治療することが多くなってしまいます。                  

マイクロを使用することにより、今まで治療で見えていなかった部位が見えてくる可能性があります。その様な点においてマイクロを用いた治療には強みがあります。

また、術者や歯科医院の方針によっては詰め物や被せ物の治療、虫歯治療においてもマイクロを使用することもあります。詰め物や被せ物の適合状態をマイクロを使用して確認することができるためです。 

その他には外科処置においても使用することがあります。                    基本的には口の中の治療では使用することが可能です。                どの治療に使用するかは歯科医師の裁量に任せることになります。

一方、顎関節症など口の中における治療でない時には基本的にマイクロは使用しません。     また、入れ歯作成などにおいても使用する機会はほとんどありません。

〇マイクロスコープを使った治療って何? 注意点

マイクロを使用することは利点が多い治療ではありますが、歯科医師にとっては導入にあたり金銭面がネックであることは前述した通りです。

保険治療で使用することもありますが、マイクロを使用した治療を得意とする先生は自由診療において使用することが多いです。                                   保険治療で使用することは可能ですが、マイクロを使用することによって保険点数が上がるわけではないのでマイクロを導入するコストが躊躇う点でもあります。                     さらにマイクロを使った治療は時間も大幅に消費します。                    術者の消耗度も大きいのです。

最近では根管治療において、CTやマイクロ、ニッケルチタンロータリーファイルという根管を清掃する特殊器具を用いることによって保険診療に微々たる加算ができる様になりましたが、大きな点数ではなく導入を促すきっかけにはなっていません。

これらのことを踏まえると、健康保険の治療でマイクロを活用するのは困難、ということができます。

患者さんにおいて知っておいて欲しい注意点は、

①マイクロは使用していない医院が比較的多いこと

②マイクロを使用している場合は自費での診療を行っている場合があること

③マイクロを使用することにより治療成績の向上は望めるが、それでも100%はないということ

①②はマイクロ導入が全ての歯科医院で行うことが難しいということは前述のとおりです。③については例えば、根管治療を行っていて痛みや違和感が取れない場合にマイクロで見ると歯にヒビが入っていたとしましょう。ではそのヒビが治療で治るかというとそういうわけではありません。マイクロを使用することにより治療の精度や診断の精度など治療内容のクオリティが上がりますが、治療を行って治る治らないはまた別の話です。マイクロを使用することだけに影響されないということを知っておいてください。

〇まとめ

マイクロの基本と治療内容や注意点に触れてきました。マイクロを使用した治療を希望される場合は、かかりつけ歯科医院にあるか確認してみましょう。                       また、電話やホームページなどでマイクロがあるか事前に確認することが必要です。        マイクロを使用した治療はメリットはありますが、必ず治癒するということではないので、あくまで治療におけるツールという点で理解しておきましょう。