ふとした瞬間、「なんだかベロがヒリヒリする」「舌先がピリピリ痛む」「口の中が焼けるような感覚がする」…そんな経験はありませんか?
その症状、もしかしたら「舌痛症(ぜっつうしょう)」かもしれません。

ベロ(舌)の痛みは、虫歯や口内炎、火傷などが原因で起こることが多いのですが、原因が見当たらないのに舌の痛みが続くようなら、注意が必要です。今回は、聞き慣れないけれど意外と多くの人が悩んでいる「舌痛症」について詳しく解説します。


舌痛症とは?

舌痛症(Burning Mouth Syndrome:BMS)は、明確な器質的異常(炎症や潰瘍など)が見られないのに、舌を中心とした口腔内に慢性的な痛みや灼熱感を感じる病気です。
特に中高年の女性に多く見られ、原因が特定しにくく、治療にも時間がかかることが特徴です。

主な症状

  • 舌の先や側面にヒリヒリ、ピリピリとした痛み
  • 舌の灼熱感(焼けるような感覚)
  • 味覚の異常(苦味・金属味など)
  • 唾液が少ないと感じる(ドライマウス感)

痛みは日中に強くなり、食事中や睡眠中は軽減することが多いとされています。また、外から見ても異常が見られないことがほとんどです。


舌痛症の原因は?

舌痛症の原因ははっきりとはわかっていませんが、心理的・神経的な要因が関係していると考えられています。

主な要因

  1. ストレスや不安、うつ状態
    精神的ストレスが舌痛症を引き起こすことがあります。特に更年期の女性に多く見られ、ホルモンバランスの変化も関係していると考えられます。
  2. 神経障害
    舌の痛みを感じる神経に障害が起こっている可能性もあります。慢性的な神経の過敏状態や痛覚過敏などが背景にあることも。
  3. 栄養不足
    鉄分、ビタミンB群(特にB12)、亜鉛などの不足によって舌の粘膜が弱くなり、痛みや違和感を感じやすくなることがあります。
  4. ドライマウス(口腔乾燥症)
    唾液の分泌が減ることで口内が乾き、舌の表面が敏感になって痛みを感じやすくなることがあります。
  5. 薬の副作用
    降圧剤、抗うつ薬、利尿薬などが舌痛症を引き起こすことがあります。

どうやって診断するの?

舌痛症は、**「除外診断」**と呼ばれる診断方法が用いられます。つまり、まずは他の病気(口内炎、カンジダ症、ビタミン不足、アレルギー、神経障害など)を検査で除外したうえで、他に原因が見つからない場合に「舌痛症」と診断されます。

検査としては以下のようなものがあります:

  • 血液検査(栄養状態やホルモンバランスの確認)
  • 口腔内の視診、触診
  • 唾液量の測定
  • 必要に応じてMRIや神経学的検査

舌痛症の治療法は?

舌痛症は原因が多様で、治療も一筋縄ではいかないことが多いです。以下のようなアプローチが取られます。

心理的アプローチ

  • カウンセリングや認知行動療法(CBT):ストレスや不安の軽減が症状緩和につながることがあります。
  • 抗うつ薬や抗不安薬の処方:少量の抗うつ薬が効果を示すことがあります(例:アミトリプチリン、ノルトリプチリンなど)。

栄養補給

  • ビタミンB群、鉄、亜鉛のサプリメントを補うことで症状が改善することもあります。

対症療法

  • 口腔内の保湿:人工唾液や保湿ジェルなどで口の中を潤す
  • 局所麻酔薬の使用:リドカインなどの塗布で一時的に痛みを和らげる

放っておくとどうなる?

舌痛症は命に関わる病気ではありませんが、生活の質(QOL)を大きく下げることがあります。慢性的な痛みや違和感により、食事が楽しめない、会話がつらい、寝つきが悪くなるなど、日常生活に支障をきたすことも。
さらに、痛みが長く続くと精神的にも不安定になり、うつ症状を併発することもあります。


舌の痛みを感じたらどうすればいい?

まずは、自己判断せず歯科または口腔外科を受診することが大切です。痛みの原因が明確なものであれば、比較的早期に治療が可能ですし、舌痛症だったとしても早めに対処を始めることで、症状の悪化を防ぐことができます。

また、以下のような生活習慣の見直しも効果的です:

  • 十分な睡眠とバランスの取れた食事
  • カフェインや辛い食べ物、アルコールの摂取を控える
  • 唇や舌を無意識に噛まないよう意識する
  • こまめな水分補給や口内の保湿

まとめ

「ベロが痛い」という症状は、単なる口内炎や舌の使い過ぎだと思いがちですが、慢性的に続く場合は「舌痛症」の可能性もあります。

原因がはっきりしない舌の痛みや不快感を感じたら、一度医療機関で相談してみることをおすすめします。早めの診断と適切な対処で、少しでも快適な生活を取り戻しましょう。