定期的に歯科医院へ通っている方の中には、

「毎回やっていることは同じように見えるのに、どうして支払う金額が違うの?」

「今日は検診なの?それとも治療なの?」

と思ったことがある方もいるのではないでしょうか。

歯科医院ではこれまで、歯周病の治療後に状態を維持するための治療として**「SPT」**という制度が広く使われてきました。

歯科の歯周病におけるメンテナンスや治療費の違いについて解説します。

患者さん自身は「定期検診に来ている」と思っていても、実際にはSPTとして通院していた、ということも珍しくありません。

ところが2026年、歯科の保険制度が変わりました。

今回は、

「そもそもSPTとは何だったのか?」

そして、

「2026年から何が変わったのか?」

というところを中心に説明してみましょう。

〇そもそもSPTとは?

SPTは、

Supportive Periodontal Therapy
(サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー)

の略です。

日本の保険診療では「歯周病安定期治療」という名称で扱われてきました。

歯周病治療を行ったあと、完全に健康な状態に戻ったわけではないものの、炎症などが落ち着き、病状が安定している患者さんに対して行う継続的な治療です。

具体的には、

・歯周ポケットの状態を確認する
・歯肉からの出血を確認する
・プラークや歯石を除去する
・必要に応じてSRPを行う
・機械を使って歯面を清掃する
・必要に応じて噛み合わせを調整する

といった処置を行います。

そのため患者さんからすると、

「いつものクリーニングと何が違うの?」

と感じるかもしれません。

SPTという概念と実際のポケットの角煮にゃ、出血の確認、プラークや歯石除去、SRP、歯面清掃、かみ合わせの調整について解説。

しかしSPTは単なる「歯のお掃除」ではありません。

一度歯周病になった患者さんの状態を安定させ、再び悪化することを防ぐための継続的な歯周病治療

という意味合いがあります。

〇SPTとメインテナンスは何が違う?

ここは少し専門的ですが、重要なところです。

歯周病治療が終了した患者さんが全員、同じ状態になるわけではありません。

治療によって歯周組織が健康な状態まで改善した場合もあれば、深い歯周ポケットなどが一部残っているものの、炎症が落ち着いて病状が安定している場合もあります。

従来の考え方では、後者に対してSPTが行われてきました。

つまり、

メインテナンス
→歯周組織が健康な状態を維持する

SPT
→歯周病のリスクが残っている状態を安定させる

という違いがあります。

メンテナンスとSPTの違いについて解説。

実際に歯科医院で行う内容は非常によく似ています。

歯周ポケットを測ったり、出血を確認したり、歯石を取ったり、機械で歯を清掃したりします。

ですから患者さんから見れば、

「前回と同じことをしている」

ように見えても不思議ではありません。

しかし歯科医師側から見ると、

「健康な状態を維持しているのか」
「歯周病を再発・悪化させないために治療を継続しているのか」

という違いがあります。

〇以前は「SPT」と「P重防」があった

ここからが2026年版で特に重要なところです。

これまでの保険診療にはSPTとは別に、

「P重防」

という制度がありました。

正式名称は、

歯周病重症化予防治療

です。

SPTとP重防は、どちらも歯周病治療後の患者さんを継続的に管理する制度でしたが、対象となる歯周組織の状態が異なっていました。

従来のSPTは、一連の歯周病治療後も4mm以上の歯周ポケットが残っているものの、病状が一時的に安定している患者さんなどが対象でした。

一方、P重防は、歯周ポケットが4mm未満になったものの、歯肉出血などが残っている患者さんなどを対象としていました。

ところが実際に行われる治療には共通する部分が非常に多く、

「患者さんから見ると違いが分かりにくい」

制度でもありました。

SPTとP重防の違いについて解説。ポケット検査、歯石取り、SRP、歯面清掃、咬合調整。

〇2026年6月、SPTとP重防が統合されました

ここが今回の大きな変更です。

2026年6月1日の診療報酬改定で、「歯周病安定期治療(SPT)」と「歯周病重症化予防治療(P重防)」は整理・統合されました。

そして新しく、

「歯周病継続支援治療」

という名称になりました。

つまり保険制度上は、

SPT
+
P重防
↓
歯周病継続支援治療

という形に整理されたわけです。

これは、治療後の歯周組織を維持することと、歯周病の重症化を予防することを、より連続した治療として考える制度変更といえます。

SPTとP重防が統合されて歯周病継続支援治療に変わったことを解説

〇「歯周病継続支援治療」では何をする?

名前は変わりましたが、患者さんが診療室で受ける処置が突然まったく別のものになるわけではありません。

一連の歯周病治療が終了したあとも継続的な支援が必要な患者さんに対し、

・プラークコントロール
・スケーリング
・SRP(スケーリング・ルートプレーニング)
・機械的歯面清掃
・必要に応じた咬合調整

などを行います。

歯周病継続支援治療で何をするか解説。プラークコントロール、歯石除去、SRP、機械的歯面清掃、咬合調整。

つまり、

「歯周病治療が終わったから、もう何もしなくていい」

のではなく、

「治療によって改善した状態をできるだけ長く維持する」

ための治療です。

2026年度の制度では、残っている歯の数によって、

1歯以上10歯未満:170点
10歯以上20歯未満:200点
20歯以上:350点

という区分になっています。

従来のSPTは200点・250点・350点、P重防は150点・200点・300点でしたので、両者を一本化したうえで評価も見直されています。

〇昔の「か強診」はどうなった?

以前の記事では、

「か強診」

という言葉についても説明しました。

「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の略称です。

しかし、この名称も現在はそのままではありません。

2024年度の診療報酬改定で制度が見直され、

「口腔管理体制強化加算」

いわゆる**「口管強(こうかんきょう)」**という仕組みに変わっています。

したがって2026年の記事で、

「か強診の歯科医院ではSPTが120点高い」

と説明するのは、現在の制度には合いません。

か強診が口腔管理体制強化加算に変わったことを解説

2026年現在は、

SPT・P重防 → 歯周病継続支援治療

か強診 → 口腔管理体制強化加算(口管強)

というように制度そのものが変わっています。

〇毎回同じような治療なのに、なぜ支払額が違うの?

これは患者さんが最も疑問に感じやすいところでしょう。

例えば前回は、

「歯周ポケットを確認して、歯石を取って、クリーニングをした」

今回も、

「歯周ポケットを確認して、歯石を取って、クリーニングをした」

それなのに窓口で支払う金額が違う。

こういうことがあります。

その理由は、

「その日に歯を掃除した料金だけを払っているわけではない」

からです。

歯周病の状態を評価するための検査を行った月、レントゲン撮影を行った月、その他必要な検査や処置を行った月では、算定される項目が変わります。

毎回同じ治療内容なのに支払額が違うことを解説

したがって見た目には、

「いつもと同じクリーニング」

に見えても、実際に行われた診療内容や保険上の算定項目によって窓口負担が変わることがあります。

〇毎月通わなければならないの?

これも患者さんからよく聞かれる疑問です。

すべての患者さんが毎月通う必要があるわけではありません。

歯周病の程度、残っている歯の数、歯周ポケット、出血、プラークコントロール、全身疾患などによって、必要な受診間隔は変わります。

すべての人が毎月通う必要がないことを解説

1か月ごとに確認した方がよい患者さんもいれば、2~3か月程度の間隔で管理できる患者さんもいます。

大切なのは、

「全員が同じ間隔で通うこと」ではなく、「その患者さんの歯周病リスクに合わせて管理すること」

です。

なお、2026年度の「歯周病継続支援治療」は、条件を満たす場合に3か月以内の間隔でも月1回まで算定できる仕組みが設けられています。

〇糖尿病がある患者さんでは医科との連携も強化

2026年の改定では、もう一つ興味深い変更があります。

糖尿病と歯周病には相互に関連があることが知られているため、医科と歯科の連携がさらに重視されるようになりました。

従来のSPTには、糖尿病によって歯周病が重症化するリスクが高い患者さんを対象とした「歯周病ハイリスク患者加算」がありました。

糖尿病がある患者さん関して医科との連携を解説

2026年度からはこれが見直され、

「重症化予防連携強化加算」

となりました。

他の医療機関から得た情報に基づいて歯周病継続支援治療を行い、その治療内容や今後の方針を医科の主治医へ情報提供する、といった医科歯科連携が評価される仕組みです。

〇では「SPT」という言葉はもう使わないの?

ここは少しややこしいところです。

SPTという言葉そのものは、歯周病学における概念としてなくなるわけではありません。

Supportive Periodontal Therapyという考え方は今後も使われます。

変わったのは、

日本の健康保険における診療報酬上の名称

です。

したがって歯科医院で、

「これからSPTで管理していきましょう」

という説明を聞くことは今後もあるかもしれません。

SPTという言葉が変わったことの解説

ただし、2026年6月以降の健康保険制度上では、従来の「歯周病安定期治療(SPT)」と「歯周病重症化予防治療(P重防)」が統合され、

「歯周病継続支援治療」

という名称になった、と理解しておくとよいでしょう。

〇まとめ

歯周病治療というと、

「歯石を取って終わり」

と思われるかもしれません。

しかし歯周病は、治療が終了したあとも再び悪化することがあります。

そのため大切なのは、

治療した状態を長期間維持することです。

これまで日本の保険診療では、そのための制度としてSPT(歯周病安定期治療)やP重防(歯周病重症化予防治療)がありました。

そして2026年6月から、この2つが整理・統合され、

「歯周病継続支援治療」

という新しい制度になりました。

名前は変わっても目的は同じです。

歯周病を再び悪化させず、自分の歯をできるだけ長く使うこと。

毎回、

「歯石を取ってクリーニングしているだけ」

に見えるかもしれません。

しかし、その定期的な確認と処置こそが、歯周病を長期間安定させるために重要なのです。

まとめとして、歯周病の継続的な管理の仕組みを解説

また、検査やレントゲン撮影などが行われた月には、普段と治療内容があまり変わらないように感じても、窓口で支払う金額が変わることがあります。

「今日はどうしていつもより高いの?」

「私は以前のSPTに当たる治療を受けているの?」

と疑問に思った場合には、遠慮なくかかりつけの歯科医院で確認してみてください。

自分がどのような状態で、なぜ定期的な治療が必要なのかを理解しておくことも、歯周病と長く付き合っていくための大切な一歩です。