皆さんは「根管治療(こんかんちりょう)」という言葉を聞いたことがありますか?
これは、虫歯がかなり深くまで進行してしまった場合に行う治療で、歯の神経(歯髄)を取り除く「抜髄(ばつずい)」を含みます。
最近、「若い人は根管治療を避けたほうがいい」と耳にしたという患者さんからの質問がありました。今回はその内容をもとに、なぜ若年層の根管治療は慎重に考えるべきなのか、歯科医師の立場から丁寧に解説していきます。
● まず、根管治療はできれば誰でも避けたい治療
年齢にかかわらず、歯の神経を取る「抜髄」は、本来であればやらないで済むならやらない方が良い治療です。
なぜなら、一度神経を取ってしまうと、歯は枯れ木のように脆くなり、再感染や破折などのリスクも上がってしまうからです。
ただし、虫歯が深くて神経に触れてしまったり、すでにズキズキとした痛みが出ている場合は、どうしても抜髄が必要になるケースもあります。

● 若い人の根管治療が特に避けられる理由とは?
患者さんが10代後半〜20代前半などの若い方の場合、特に慎重になります。その理由は、「歯の根の部分(根尖)」がまだ完全に発達していない可能性があるからです。
口の中に見えている歯(歯冠)は大人のようにしっかりして見えても、歯の根の先端部分、いわゆる「根尖(こんせん)」は未完成なことがあります。
● 完成された歯と未完成な歯の違い
完成された永久歯の根尖では、歯髄の通っている管(根管)がだんだん細くなっていて、最後は非常に狭く締まっています(狭窄:きょうさく)。

この狭窄部分で神経をカットすることで、
- 傷が小さいため治りやすい
- 痛みが出にくい
- 根の先までピッタリ詰め物(根充)がしやすい
というメリットがあります。
一方、未完成な若い歯の根尖は、「ガバガバに開いている」状態です。
この場合、どこまでが神経でどこからが外かが曖昧で、

- 切断面が大きくなりやすい
- 痛みが出やすい
- 詰め物をしても隙間ができやすい
というデメリットがあります。
● 隙間ができるとどうなるの?
詰め物に隙間があると、その部分に細菌が侵入しやすくなります。
すると、根の先に炎症が起こり、
- 歯茎が腫れる
- 噛むと痛む
- ひどい場合は抜歯が必要になる
といった事態に発展することもあるのです。
● だから、私たちは「若い人の神経はできるだけ残したい」
歯科医師としても、若い患者さんの神経はできる限り温存したいと思っています。
虫歯を削る際も、「何とかして神経に触れないように」と細心の注意を払いながら処置をしています。
患者さん自身も、「ちょっとの痛みだから」と放置せず、早めの受診と治療が大切です。
初期の虫歯であれば、神経を取らずに済む可能性が高くなります。
痛くないうちに治療しておくことがとても大事です!
● まとめ:若い方は特に、早めの虫歯治療が重要!
- 若い人の歯は根が未完成なため、根管治療の成功率が下がる
- 隙間ができると再感染や炎症のリスクが高く、最悪抜歯の可能性も
- だからこそ、早めの治療・予防が何より大切!
虫歯を防ぎ、歯を長く健康に保つためには、日頃の歯磨きと定期的な歯科検診が欠かせません。