思春期の真っただ中、10代は部活や塾、スマホやゲームと多忙な毎日を送るなかで、「歯が痛い」と訴えることがあります。中高生になると、乳歯はすでに抜けて、すべて永久歯になっています。
この時期の虫歯は、見逃されやすく、「痛い」と感じたときにはかなり進行していることが少なくありません。
では、10代の永久歯に虫歯ができて痛みが出ている場合、どのような治療が予測されるのでしょうか?そして、神経を取る治療(抜髄)をしてもうまくいかないケースがあるのはなぜでしょうか?
この記事では、そうした疑問にわかりやすくお答えしていきます。

🦷 10代の虫歯──なぜ進行に気づきにくい?
10代は、もう自分で歯磨きをしっかりしているはず…と思いがちですが、実際にはまだ**「磨き残しが多い」「奥歯をちゃんと磨けていない」「間食のコントロールができていない」**といった問題がよく見られます。
さらに、子どもが成長して親の目が届かなくなることで、痛みが出るまで気づかれない虫歯が増えるのが10代です。
しかも、永久歯は乳歯よりも神経に達するまでの距離が短くないため、虫歯がかなり進んでからでないと痛みを感じにくいという特徴があります。
❗「痛い」ときは神経まで達している可能性が高い
虫歯の痛みには段階がありますが、「ズキズキする」「夜に痛む」「冷たいものや熱いものがしみる」という症状がある場合、虫歯が神経(歯髄)まで進行している可能性が非常に高いです。
この場合に予測される治療としては、以下のいずれかになります:
▼ ケース①:神経を残せる場合(初期の歯髄炎)
- 歯髄温存療法(覆髄・生活歯髄切断など)
- 感染がごく軽度であれば、部分的に神経を残せる可能性があります
▼ ケース②:神経をすべて取る場合(抜髄)
- 神経全体が炎症・感染している場合、抜髄(ばつずい)という治療で神経を除去
- 根管内の洗浄・消毒・薬剤充填を行う「根管治療」が必要になります

🩺 抜髄すれば大丈夫?──そうとも限らないのが10代の難しさ
実は10代の永久歯の治療では、抜髄をしても必ずしも成功するとは限らないという問題があります。
▼ その理由①:歯の根がまだ未完成な場合がある
特に中学生くらいまでの年齢では、根の先が完全に閉じていない未完成永久歯が多く、根管治療が非常に難しくなります。
この状態で神経を取ってしまうと、
- 歯の発育が止まる
- 歯の強度が落ちて将来折れやすくなる
- 最悪の場合、歯を保存できなくなることも
といったリスクが出てきます。
▼ その理由②:細菌の再感染が起こりやすい
10代の歯は、根管が細く複雑で、神経を取り除く処置が非常に繊細です。
一部でも細菌が残っていたり、詰め物の封鎖が不完全だったりすると、後から膿が溜まる・再発する・歯根嚢胞ができるなどのトラブルが起こり得ます。
特にこの年代では、歯の組織も柔らかく感染が広がりやすいため、抜髄したはずなのに再度痛みが出るというケースも珍しくありません。


(1)エナメル質が成熟していない、溝が深くて虫歯になりやすい
(2)象牙質が薄く刺激が伝わりやすいので歯髄炎になりやすい
(3)歯根が未完成。神経が虫歯に感染すると病変が歯周組織に急速に広がる
😣 抜髄が失敗するとどうなる?
抜髄後に症状が改善しない、あるいは一旦落ち着いたのに再び痛みや腫れが出てくるような場合、次のような追加治療が必要になることがあります:
- 再根管治療(もう一度やり直す)
- 歯根端切除術(外科的に膿の袋を取る)
- 抜歯(最終的に歯を残せないケース)
10代で永久歯を失うと、その後の歯並びや顎の発育、見た目の問題、矯正への影響など、長期的なデメリットが非常に大きいため、極力避けたい状況です。
🛡️ ではどうすればいいの?──なるべく神経を残す方向へ
最近では、「MTAセメント」などの新しい材料を使って、**できるだけ神経を残す治療(歯髄保存療法)**が試みられています。
この方法は、特に10代の未完成永久歯では非常に有効で、
- 根の発育を促す
- 歯の寿命を延ばす
- 感染をコントロールしやすくする
といったメリットがあります。
ただし、治療には高い精度と材料の選択が必要であり、すべての歯科医院でできるとは限りません。また、保険適用外の治療になる場合もあります。
🧠 まとめ:10代の虫歯、「痛い」と言ったときが治療の分かれ道
- 10代で永久歯に痛みが出ている場合、多くは神経に達している虫歯
- 抜髄が必要なケースもあるが、未完成な根や再感染のリスクにより失敗する可能性もある
- 可能であれば神経を残す治療が望ましいが、症例選びと医師の判断が重要
- 放置せず、早期の受診と治療が歯の寿命を左右する
10代は大人の歯を一生ものに育てていくための大事な時期です。だからこそ、虫歯を放置せず、痛みを感じたらすぐに歯科医院へ。親御さんも、成長期の「自立」と「ケアの継続」のバランスを大切にしながら、定期的なチェックと早期対応を心がけてあげてくださいね。