こんにちは。歯の痛みで歯科を受診される方はとても多いですが、その中には「虫歯でも、歯の根の病気でもない」ケースがあるのをご存じでしょうか。

今回は、実際に診療であったやり取りをもとに、「奥歯の痛みと鼻の病気の関係」についてご紹介します。歯の痛みと鼻の病気がどう関係するのか、不思議に思う方も多いと思います。ぜひ最後まで読んでみてください。


実際の診療での会話

ある患者さんが来院されました。

患者さん:「上の奥歯が痛いのです」

そこでレントゲンを撮影したところ、虫歯も、歯の根の先に膿がたまる「根尖病巣」も見つかりません。

私はお聞きしました。
歯科医師:「鼻かぜをひいていませんか?」

すると患者さんはこう答えました。
患者さん:「ちょっと風邪気味で鼻が詰まっております」

私はこうお伝えしました。
歯科医師:「それは歯の病気ではなく、上顎洞炎かもしれませんよ」

このように、歯の痛みだと思っていても、実は鼻の奥にある「上顎洞」の炎症が原因ということがあるのです。


上顎洞(じょうがくどう)とは?

上顎洞は、私たちの顔の骨の中にある「副鼻腔」のひとつです。頬の奥に左右一対あり、鼻の通り道とつながっています。

上の奥歯(特に第一大臼歯や第二大臼歯)の根っこは、この上顎洞のすぐ下に位置しています。人によっては、歯の根の先と上顎洞の底がとても近く、まるで隣り合わせのような構造をしています。

そのため、上顎洞に炎症が起きると、奥歯の周りに「響くような痛み」や「噛むと重い痛み」を感じることがあるのです。


上顎洞炎(副鼻腔炎)による歯の痛み

いわゆる「副鼻腔炎(ちくのう症)」の一種である上顎洞炎が起こると、鼻水や鼻づまり、頭の重さといった症状に加えて、奥歯の痛みを訴える方も少なくありません。

これは炎症による圧力や神経への刺激が、歯の痛みとして脳に伝わるためです。
患者さんご自身は「歯が痛い」と感じるのですが、実際には歯に異常がないこともあるのです。


歯が原因で上顎洞炎を起こすことも

逆のパターンもあります。
歯に大きな虫歯や根尖病巣(歯の根の先にできる膿の袋)があると、その感染が上顎洞に波及して炎症を引き起こすことがあります。

これを「歯性上顎洞炎」と呼びます。
歯が原因で起きている場合、耳鼻科での治療だけでは改善しません。原因となっている歯の治療(根管治療や抜歯など)が必要になります。

このように、歯の痛みと鼻の炎症は双方向に影響し合うことがあるため、診断がとても重要なのです。


どんな検査をするの?

歯科医院で行う代表的な検査は次の通りです。

  • レントゲン撮影:虫歯や根尖病巣の有無を確認
  • 打診テスト:歯を軽く叩いて響き方を調べる
  • 触診:歯ぐきや頬の圧痛を確認
  • 症状の聞き取り:鼻づまりや風邪の有無を質問

必要に応じて、耳鼻科でCT検査を依頼し、上顎洞の状態を詳しく調べることもあります。


こんな症状のときは要注意

  • 奥歯が痛いのに虫歯が見つからない
  • 鼻づまりや鼻水が続いている
  • 頬の奥が重い、痛い
  • 上の奥歯が複数同時に痛い

こうした場合は、上顎洞炎の可能性を考えた方がよいかもしれません。


まとめ

  • 奥歯の痛み=必ずしも虫歯とは限りません
  • 上顎洞炎など鼻の病気が原因で痛みを感じることがあります
  • 逆に歯の病気が原因で上顎洞炎を引き起こすこともあります
  • 正確な診断のためには、歯科と耳鼻科の連携が大切です

奥歯の痛みでお困りの方は、まず歯科医院でレントゲン検査を受けてみてください。そのうえで必要に応じて耳鼻科の受診をおすすめすることもあります。

「歯が痛い=虫歯」と思い込んでしまうと、原因を見落とすことがあります。痛みが長引くときや違和感が続くときは、ぜひ専門家にご相談ください。


📖 このように、歯と体の関係はとても奥深く、不思議なつながりがあります。歯の健康を守るために役立つ情報を、これからもブログで発信していきます。